マンション管理組合のトラブル事例と防ぎ方

マンション管理組合のトラブル事例を、国交省の令和5年度マンション総合調査の統計と想定例で整理します。理事長トラブル、役員のなり手不足、滞納、生活音などの管理トラブルについて、規約に沿った対応手順と防ぎ方、相談先をまとめました。

まず押さえたいこと:トラブルは「決め方」と「記録」で小さくできる

この記事の要点

  1. 01過去1年のトラブルで最多は居住者間のマナーで60.5%
  2. 02理事長は理事会の決議で選任・解任できる(標準管理規約第35条)
  3. 033か月以上の滞納住戸があるマンションは30.1%
  4. 04決め方を規約で明確にし、記録を残し、外部の目を入れる
この記事の目次
横断歩道を渡る年配の夫婦

マンション管理組合のトラブル事例を統計で見る

マンション管理組合のトラブル事例を知っておくと、自分たちのマンションで同じことが起きたときに、慌てずに手順を踏めます。国土交通省の「令和5年度マンション総合調査」は、管理組合(1,589組合)に過去1年間に起きたトラブルを尋ねています。最も多いのは居住者間の行為・マナーをめぐるもので60.5%、次いで建物の不具合が31.7%、費用負担が24.2%でした。「特にトラブルは発生していない」は16.0%にとどまります。

トラブルの種類発生した割合主な内訳
居住者間の行為・マナー60.5%生活音43.6%、違法駐車18.2%、ペット飼育14.2%、共用廊下等への私物の放置13.9%
建物の不具合31.7%水漏れ20.1%、雨漏り10.7%
費用負担24.2%管理費等の滞納20.2%、管理費等の不足6.0%
管理組合の運営13.4%役員又は専門委員の人材不足12.0%、管理組合内での深刻な意見対立1.8%
近隣関係10.4%騒音・異臭8.2%
管理規約8.1%―
マンション管理業者1.2%委託管理業務の不十分な実施1.2%

割合は複数回答で、内訳は全管理組合に対する割合です。完成年次が古いマンションほど発生率は高い傾向があり、昭和49年以前に完成したマンションでは「管理組合の運営」に関するトラブルが38.5%、「費用負担」が44.0%に上ります。この記事では、管理組合が当事者になりやすいトラブルを想定例で取り上げ、防ぎ方と対応の手順を整理します。管理組合の基本的な仕組みは管理組合とは?とマンション管理の基本で解説しています。

理事長トラブルの事例と、規約に沿った対応

理事長トラブルは件数こそ多くありませんが、起きると組合全体が動けなくなる深刻な管理トラブルです。総合調査で「役員の不当行為」を挙げた管理組合は0.3%、「管理組合内での深刻な意見対立」は1.8%でした。

このケースで手がかりになるのが、マンション標準管理規約(令和7年10月改正)の定めです。第37条の2は、役員が自己または第三者のために管理組合と取引をしようとするときなどは、理事会で重要な事実を開示し、承認を受けなければならないとしています。第38条第6項は、管理組合と理事長の利益が相反する事項について、理事長は代表権を持たず、監事または理事長以外の理事が管理組合を代表するとしています。

理事会で理事長を交代させることはできる

標準管理規約第35条第3項は、理事長・副理事長・会計担当理事は「理事会の決議によって、理事のうちから選任し、又は解任する」と定めています。最高裁判所も平成29年12月18日の判決で、理事の互選で理事長を選ぶ規約のもとでは、理事の過半数の一致で理事長の職を解くことができると判断しました。ただし、自分たちの規約の文言が標準管理規約と異なる場合もあるため、規約を確認したうえで進めます。理事の地位そのものを失わせる解任は、総会の決議事項です(同条第2項)。

  1. 規約と事実を確認する理事長の権限の範囲、理事会の決議事項、問題となった行為の記録をそろえます。
  2. 理事会で議題にする開示と承認の手続きを求め、議事録に残します。監事は理事会に出席し、必要があれば意見を述べる立場です(第41条)。
  3. 監事による理事会の招集理事長が理事会を開かない場合、監事は理事長に招集を請求し、開かれなければ自ら招集できます(第41条第6項・第7項)。
  4. 組合員による臨時総会の請求組合員総数と議決権総数の各5分の1以上の同意があれば、臨時総会の招集を請求できます(第44条)。
注意理事長の交代や解任をめぐる争いは、手続きの不備があると決議の効力が争われるおそれがあります。招集の手続きや議案の書き方に不安がある場合は、マンション管理士や弁護士に確認してから進めてください。

役員のなり手不足をめぐる管理組合のトラブル

トラブル事例として最も身近なのが、役員のなり手不足です。総合調査では、管理組合の運営をめぐるトラブルとして「役員又は専門委員の人材不足」が12.0%ありました。管理組合運営の将来への不安でも、「区分所有者の高齢化」が57.6%、「理事の選任が困難」が27.6%に上っています。

なり手不足は、誰かを責めても解決しません。辞退の基準を細則で決めておく、役員の人数や任期を見直す、理事会の開催回数や資料を減らす、WEB会議で参加できるようにするなど、負担を下げる工夫が先です。令和5年度マンション総合調査では、外部役員の選任を検討している、または将来必要なら検討したいとする管理組合が34.6%ありました。検討理由は、区分所有者の高齢化(42.7%)と役員のなり手不足(42.3%)が上位です。

輪番制を続ける場合も、順番を飛ばす条件(高齢、長期の入院、遠方居住など)と、飛ばした人に別の形で協力してもらう方法(行事の手伝い、アンケートへの回答など)をあらかじめ決めておくと、不公平感を和らげられます。

理事会で話し合うときの問いかけの例

「役員の仕事のうち、外部に任せられるものはどれか」「辞退を認める条件を、全員に同じ基準で決められないか」「理事会の資料を、事前に読めば10分で判断できる量にできないか」

理事会の運営を軽くする方法ははじめての理事会、何から始める?や理事会の年間スケジュールをつくるで紹介しています。

管理費・修繕積立金の滞納トラブル

費用負担をめぐるトラブルの中心は、管理費・修繕積立金の滞納です。総合調査では、3か月以上滞納している住戸があるマンションは30.1%でした。滞納が長引くと、修繕積立金の不足につながり、他の区分所有者の不公平感も強まります。

  1. 早く気づく仕組みを作る毎月の収支報告で滞納の一覧を確認し、2か月目には連絡するルールにします。
  2. 督促の手順を決めておく電話、書面、内容証明郵便、法的手続きの検討と、段階と時期を細則や理事会決議で決めます。
  3. 所有者の変更を把握する組合員名簿を定期的に確認し、相続などで所有者が変わったときの届出を周知します。
  4. 専門家に早めに相談する支払督促や少額訴訟などの手続きは、弁護士やマンション管理士と相談しながら進めます。

督促は、感情的な対立を避けるためにも、理事個人ではなく管理組合として、決めた手順どおりに淡々と行うことが大切です。分割での支払いを認める場合も、理事会で条件を決めて書面に残します。滞納者の氏名を掲示するなどの対応は、プライバシーの侵害を問われるおそれがあるため避け、必要な手続きは専門家と相談して進めます。

総合調査では、組合員名簿を整備している管理組合は86.0%ですが、変更のたびに更新しているか年1回以上確認しているのは68.7%でした。名簿の更新が滞ると、滞納への対応も遅れます。お金の流れの基本は管理費・修繕積立金は何に使われる?を参照してください。

生活音・ペット・水漏れなど住民間の管理トラブル

件数が最も多い居住者間のトラブルは、管理組合が「どこまで関わるか」で迷いやすい分野です。生活音(43.6%)のように個人間の問題に近いものから、共用廊下への私物の放置(13.9%)やペット飼育(14.2%)のように規約・使用細則の違反になり得るものまで幅があります。

個人間の問題に理事が一人で入り込むと、こじれやすくなります。まずは掲示や配布物で全体に注意を呼びかけ、個別の対応が必要な場合も、理事会で方針を決めてから複数人で、あるいは文書で行うのが基本です。標準管理規約第67条は、区分所有者や同居人、賃借人が規約や使用細則に違反したとき、または共同生活の秩序を乱す行為をしたときは、理事長が理事会の決議を経て、勧告・指示・警告を行えるとしています。

トラブル管理組合の関わり方の目安
生活音全体への周知が中心。規約や細則に定めがあれば、理事会決議を経て文書で注意
共用部分への私物の放置・違法駐車規約・使用細則に基づき、理事会決議を経て是正を求める
ペット飼育ペット飼育細則の有無と内容を確認し、違反があれば勧告
専有部分からの水漏れ原因が共用部分か専有部分かを調べ、保険と負担の区分を確認

水漏れ(20.1%)は、原因が共用部分の配管か専有部分かで費用の負担者が変わります。管理組合が加入している損害保険の内容と、規約上の専有部分・共用部分の区分を、日頃から理事会で共有しておくと初動が早くなります。反対意見や住民の対立をまとめる方法は住民の意見を、どうまとめる?で解説しています。

管理組合のトラブルを防ぐ3つの仕組みと相談先

ここまでの事例に共通するのは、トラブルそのものより、決め方と記録があいまいなことで問題が大きくなる点です。次の3つを整えておくと、多くの管理トラブルは小さいうちに収められます。

  • 決め方を規約・細則で明確にする理事会と総会の決議事項、役員の利益相反の手続き、督促の手順、辞退の基準を文書にしておきます。管理規約が2026年4月施行の改正区分所有法に合わせて見直されているかも確認します。
  • 記録を残し、見られるようにする理事会・総会の議事録、会計帳簿、修繕履歴を保管し、組合員の請求があれば閲覧できるようにします(標準管理規約第64条)。
  • 外部の目を入れる監事の監査を実質化し、必要に応じてマンション管理士などの専門家を活用します。総合調査では、専門家を活用しているマンションは41.4%でした。

相談先

管理組合の運営や規約についてはマンション管理センター(03-3222-1517)、建物・設備についてはマンション管理センター(03-3222-1519)で相談できます。法的な手続きが必要な場合は弁護士に、自治体によってはマンション管理士の派遣制度もあります。大規模修繕をめぐる対立は、合意形成の段取りで防げることが多いため、大規模修繕工事とは?費用相場・周期・進め方の全体像や総会の進め方と準備もあわせて確認してください。

注意トラブルの当事者の氏名や住戸番号を掲示物や理事会だよりに載せると、プライバシーの侵害につながるおそれがあります。住民への周知は、事実と決定事項を中心に、個人が特定されない形で行いましょう。

トラブルを防ぐための管理組合の確認リスト

確認する項目見ておきたいこと
役員の取引利益相反取引を理事会で開示・承認する決まりがあるか
理事長の選任・解任規約で理事会の決議によると定めているか
監事理事会に出席し、監査結果を総会に報告しているか
役員の選び方輪番の順番と、辞退を認める基準が決まっているか
滞納督促の段階と時期が決まり、毎月確認しているか
組合員名簿所有者の変更を年1回以上確認しているか
使用細則ペット・駐車・共用部分の使い方のルールがあるか
記録の保管議事録・帳簿・修繕履歴を閲覧できる状態か

すべてを一度に整える必要はありません。最近起きた困りごとに関係する項目から、理事会の議題にしてみてください。

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よくある質問

マンション管理組合で多いトラブルは何ですか?

国土交通省の令和5年度マンション総合調査では、居住者間の行為・マナーをめぐるトラブルが60.5%と最も多く、内訳では生活音が43.6%でした。次いで建物の不具合(31.7%、水漏れ20.1%など)、費用負担(24.2%、管理費等の滞納20.2%など)が続きます。

理事長を辞めさせることはできますか?

マンション標準管理規約第35条第3項は、理事長は理事会の決議で選任・解任すると定めています。最高裁判所も平成29年12月18日の判決で、理事の互選で理事長を選ぶ規約のもとでは、理事の過半数の一致で理事長の職を解けると判断しました。自分たちの規約の文言を確認し、手続きに不安があれば専門家に相談してください。

管理組合は住民同士の騒音トラブルに対応する必要がありますか?

生活音は個人間の問題に近く、管理組合の役割は全体への周知が中心です。規約や使用細則に違反する場合や共同生活の秩序を乱す場合は、理事会の決議を経て理事長が勧告や指示を行えます(標準管理規約第67条)。理事が一人で当事者の間に入るのは避けたほうが安全です。

役員のなり手がいないときはどうすればいいですか?

役員の人数や任期の見直し、理事会の負担軽減、WEB会議の導入、辞退基準の明確化などから検討します。令和5年度マンション総合調査では、外部役員の選任を検討中または将来検討したいとする管理組合が34.6%ありました。マンション管理士など専門家の活用も選択肢です。

管理組合のトラブルはどこに相談できますか?

公益財団法人マンション管理センターが、管理組合の運営・規約(03-3222-1517)と建物・設備(03-3222-1519)の電話相談を受け付けています。法的な手続きが必要な場合は弁護士に、継続的な支援が必要な場合はマンション管理士に相談する方法があります。自治体の相談窓口も確認してみてください。

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出典・参考資料

写真:Photo by Joey Huang on Unsplash

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