管理費・修繕積立金は何に使われる?

毎月引き落とされる管理費と修繕積立金。金額は知っていても、何に使われているかまで把握している人は多くありません。2つのお金の役割と、総会資料のどこを見れば使い道が分かるのかを、住民の目線で整理します。

まず押さえたいこと:管理費は「いま」、積立金は「将来」のお金

この記事の要点

  1. 01管理費は日常の管理、修繕積立金は将来の修繕に使う
  2. 02平均は管理費11,503円・積立金13,054円(令和5年度)
  3. 03決算書は大きい支出と前年比、積立金残高から読む
  4. 04疑問は支払いを止めず、書面で具体的に質問する
この記事の目次
青空の下に並ぶ中高層マンション

月2万円台の「管理費等」は、2つの財布に入っていく

口座から毎月引き落とされる「管理費等」。金額は覚えていても、その先で何に使われているかまで説明できる人は多くありません。まず知っておきたいのは、このお金が性格の違う2つの財布に分かれて入っていく、ということです。

国土交通省「令和5年度マンション総合調査」によると、1戸あたりの月額の平均は、管理費が11,503円、修繕積立金が13,054円(いずれも駐車場使用料などからの充当分を除く)。合わせると月2万5千円ほどで、年間にすれば30万円前後になります。住宅ローンほどではないにせよ、家計の固定費としては小さくない額です。

毎月の管理費等が、日常の管理に使う管理費会計と、将来の修繕に備える修繕積立金会計の2つに分かれて入ることを示す図
管理費と修繕積立金は、同じ口座から引き落とされても行き先が違う(マンション標準管理規約 第25条・第27条〜第29条をもとに作成)

負担額は「持分」で決まる

国交省のマンション標準管理規約(管理組合が自分たちの規約をつくるときのひな形)では、管理費等の額は各区分所有者の共用部分の共有持分に応じて算出するとされています。持分は専有面積の割合で決めている例が多く、広い部屋ほど負担が大きくなるのはこのためです。自分の部屋の額の根拠は、管理規約の別表で確かめられます。

管理費
清掃、点検、管理会社への委託費など、日常の管理に使うお金。
修繕積立金
外壁や屋上防水、設備の更新など、何年かおきの大きな修繕に備えて貯めるお金。
使用料
駐車場や駐輪場などの利用者が払うお金。標準管理規約では、管理に充てた残りを修繕積立金に積み立てるとしています。
区分経理
管理費と修繕積立金を混ぜずに、別々の会計として記録・管理すること。
公園のベンチで話す年配の夫婦
毎月の固定費として、管理費等の中身を一度見ておく価値はある

管理費は、毎日の「当たり前」を保つための費用

管理費の使い道は、標準管理規約の第27条に列挙されています。管理員の人件費、共用設備の保守や運転費、共用部分の火災保険・地震保険、清掃やごみ処理、管理会社への委託業務費、管理組合の運営費などです。言い換えると、エントランスの照明がつき、エレベーターが動き、ごみ置き場が片づいている状態を毎日保つための費用です。

自分のマンションの内訳は、総会で配られる決算書(収支報告書)に載っています。項目名は管理会社によって多少違いますが、おおむね次のように読み替えられます。

決算書の項目(例)中身住民として見ておきたい点
管理委託費管理会社に支払う事務・管理員・清掃などの費用支出の中で最も大きいことが多い。前年から変わったか
設備保守点検費エレベーター、消防設備、給水設備などの点検契約先と点検回数。更新時期が近い設備はないか
水道光熱費共用部分の電気代・水道代電気料金の改定で増えていないか
損害保険料共用部分の火災保険・地震保険更新時に保険料や補償内容が変わっていないか
小修繕費照明の交換、扉の調整など細かな補修予算を大きく超えていないか

管理費の値上げ案が出たら、理由を仕分ける

管理費の改定が議案に上がったときは、増える理由がどこにあるのかを仕分けると判断しやすくなります。管理会社との委託契約の見直しなのか、共用部分の電気料金なのか、損害保険の更新による保険料の変化なのか、設備の保守契約の追加なのか。理由ごとに「避けられない増加」と「見直す余地がある増加」は違います。議案書に内訳の比較表がなければ、項目別の前年比を示してほしいと頼んでみてください。

管理費の内訳を項目ごとに深掘りしたい場合は、マンションの管理費とは?相場・内訳・積立金との違い記事で詳しく扱っています。

修繕積立金は、使わずに貯めておくお金

修繕積立金は、日常の支払いには使わないお金です。標準管理規約の第28条は、取り崩してよい場面を、一定年数ごとの計画的な修繕、不測の事故などによる修繕、共用部分の改良などに限っています。さらに「管理費とは区分して経理しなければならない」とされており、管理費が足りないからといって積立金から回すことは想定されていません。

月1戸あたりの修繕積立金の平均額が、平成11年度の7,378円から令和5年度の13,054円まで増えてきたことを示す棒グラフ
出典:国土交通省「令和5年度マンション総合調査」(駐車場使用料等からの充当額を除く額)

平均額はこの四半世紀で着実に上がってきました。それでも、同じ調査で「現在の積立額の残高が長期修繕計画に対して不足している」と答えた管理組合は36.6%あります。毎月払っているから安心、とは限らないわけです。

自分のマンションの水準をざっくり測る

国交省の「修繕積立金ガイドライン」(令和6年6月改定)は、計画期間全体でならした修繕積立金の目安を、専有面積1㎡あたりの月額で示しています。

335円/㎡20階未満・延床5,000㎡未満の平均値(幅235〜430円)
252円/㎡20階未満・5,000〜10,000㎡未満の平均値(幅170〜320円)
338円/㎡20階以上の平均値(幅240〜410円)

たとえば延床面積7,000㎡・10階建てのマンションで専有面積70㎡の部屋なら、平均値で70×252=17,640円。機械式駐車場があれば加算額も考えます。ただしこれは「計画期間全体の平均」との比較です。いまの月額が目安より低くても、段階的に上げる計画になっていれば将来の額と合わせて見る必要があります。

残高が足りないと、何が起きるのか

国交省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」では、大規模修繕工事の戸あたり工事金額は「100〜125万円/戸」が最も多い層でした。50戸なら、1回の工事で5,000万円を超える計算です。その時点で積立金の残高が足りなければ、選択肢は、一時金を集める、金融機関から借り入れる、工事の範囲や時期を見直す、積立金を値上げする、のいずれか(または組み合わせ)になります。どれも総会の決議が必要で、住民一人ひとりの家計に直接響きます。不足の背景は修繕積立金が不足する理由の記事で整理しています。

積立方式もあわせて確認

令和5年度の調査では、均等積立方式が40.5%、段階増額積立方式(最初は低く、段階的に上げる方式)が47.1%でした。ガイドラインは段階増額の場合、初期額を均等にした場合の0.6倍以上、最終額を1.1倍以内とする考え方を示しています。値上げの予定があるかどうかは、修繕積立金の値上げの記事も参考にしてください。

総会の決算書は、この順番で読めば迷わない

通常総会の議案書には、前年度の決算と次年度の予算がまとめて載っています。数十ページあっても、全部を読む必要はありません。住民が見るべき場所は、だいたい決まっています。

  1. 管理費会計と修繕積立金会計を分けて開く決算書は2つの会計が別の表になっているはずです。1枚にまとめられていたら、区分経理ができているかを聞いてよい点です。
  2. 支出の大きい項目を3つ拾う管理費会計なら管理委託費、設備点検費、光熱費あたりが上位に来ることが多いでしょう。金額と前年比だけメモします。
  3. 前年から大きく動いた項目に印をつける増えた項目に理由が書かれているかを見ます。事業報告に説明があれば、それで足ります。
  4. 修繕積立金の残高を長期修繕計画と比べる残高そのものより、「計画上この時点でいくらあるはずか」との差が大事です。計画表の同じ年度の欄と見比べます。
  5. 予算案で新しく増える支出を確認する新規の工事や契約変更が予算に入っていれば、別の議案として説明されているはずです。

「繰越金」と「余剰」の扱いも見ておく

決算で管理費が余ったとき、その扱いは規約で決まっています。標準管理規約の第61条は、管理費の余剰は翌年度の管理費に充てるとし、逆に不足したときは負担割合に応じて組合員に負担を求められるとしています。毎年まとまった余剰が出ているなら管理費の設定が高めなのかもしれませんし、毎年ぎりぎりなら値上げ議論が近いサインとも読めます。数年分の決算書を並べると、こうした傾向が見えてきます。

「高すぎる」ではなく「何が増えたか」を聞く

分からない項目があったとき、「この支出は高すぎるのでは」と聞くと、相手は身構えます。資料のページと項目を示し、事実を尋ねる形にすると、答えが具体的になりやすくなります。

  • 「決算書○ページの設備保守点検費が前年より増えていますが、どの点検が追加されたのでしょうか」
  • 「修繕積立金の残高は、長期修繕計画で想定している今年度末の残高と比べてどのくらい差がありますか」
  • 「管理委託費の見直しについて、最後に他社の見積もりを取ったのはいつですか」
  • 「来年度の予算にある○○工事は、修繕積立金と管理費のどちらから支出する予定ですか」

質問は総会当日に口頭で出すより、案内に書かれた期限までに書面で出すほうが、正確な回答を用意してもらえます。会計帳簿や長期修繕計画書そのものを見たいときは、標準管理規約の第64条にならった規定で、理由を付けた書面で閲覧を請求できる仕組みになっているのが一般的です。

注意使い道に納得がいかなくても、管理費等の支払いを止めるのは避けてください。滞納は督促や法的手続きの対象になり、標準管理規約の第26条では、管理組合は滞納分を部屋を買った人(特定承継人)にも請求できるとされています。令和5年度の調査では、3か月以上の滞納住戸があるマンションは30.1%でした。疑問は支払いとは切り離して、質問や総会での意見として出すのが筋です。

貸している・相続した部屋のお金はどうなる?

管理費等を管理組合に納める義務を負うのは、部屋の持ち主である区分所有者です。部屋を賃貸に出していても、支払い義務は所有者に残ります。家賃に「管理費込み」と書かれている賃貸物件でも、多くはオーナーが家賃から組合に払っている形で、借りている人が組合と直接やり取りするわけではありません。

一方で、使い道を決める場(総会)で議決権を持つのも区分所有者です。遠方に住んでいて総会資料をじっくり読めない、という人ほど、決算書の要点だけでも毎年目を通しておくと、値上げや大きな工事の議案が出たときに慌てずに済みます。立場ごとの確認事項は自分のマンションで確認しておきたいことの記事にまとめています。

相続したら、まず滞納の有無を

親の部屋を相続した場合、未払いの管理費等があるとその支払いも引き継ぐことになります。管理会社や理事長に、組合員の変更を届け出るときに、滞納の有無と現在の月額をあわせて確認しておくと安心です。

お金の資料で確認したいこと

自分の部屋の月額管理費と修繕積立金それぞれの額と、算出の根拠(規約の別表)
区分経理決算書で管理費会計と修繕積立金会計が分かれているか
大きな支出管理委託費・設備点検費・光熱費の金額と前年比
増減の理由大きく動いた項目に事業報告で説明があるか
積立金の残高長期修繕計画で想定している同じ年度の残高との差
積立方式均等積立か段階増額か。次の値上げはいつ、いくらか
滞納の状況滞納額や督促の状況が報告されているか
予算案の新規支出新しい工事や契約変更が、どちらの会計から出るか

全部をいっぺんに確認する必要はありません。今年は決算書の上位3項目、来年は長期修繕計画との比較、というように少しずつ見ていくと、数年で自分のマンションのお金の流れがつかめてきます。確認した内容と質問への回答は、翌年の総会資料と比べられるように保管しておくと役に立ちます。

確認メモを開く・印刷する

無料修繕工事の費用が気になる方へ

その見積もり、本当に適正ですか?

工事項目・数量・単価・諸経費を、無料で確認します。必要な施工と監理は守りながら、理事会で質問すべき点を整理します。

  • 確認は無料
  • 見積書を送るだけ
  • 理事会の判断材料に
無料で見積もりをチェック サービスの内容を見る →

工事費・積立金の引き下げや、施工品質・不正の有無を保証するものではありません。

よくある質問

管理費と修繕積立金、どちらが大事ですか?

役割が違うので、どちらも欠かせません。管理費が足りないと清掃や点検が滞り、修繕積立金が足りないと十数年ごとの大規模修繕で一時金や借入れが必要になります。住民として特に気にしておきたいのは、目に見えにくい修繕積立金の残高と、長期修繕計画との差です。

会計の知識がなくても決算書は読めますか?

読めます。最初は、管理費会計と修繕積立金会計が分かれているか、支出の大きい項目はどれか、前年から大きく変わった項目はどれか、の3点だけで十分です。分からない言葉があれば、ページと項目名を示して管理会社や理事会に質問してください。

うちの修繕積立金は安いほうですか?

国交省の修繕積立金ガイドライン(令和6年6月改定)の㎡単価の目安と比べると、おおよその水準が分かります。専有面積に目安の単価を掛けて比べますが、比べる相手は「計画期間全体の平均額」です。段階的に値上げする計画なら、将来の額も含めて判断してください。

賃貸で住んでいますが、管理費の使い道に意見を言えますか?

管理費等の支払い義務と総会での議決権は、部屋の所有者にあります。借りている人は、まずオーナーや管理会社に意見を伝えるのが基本です。標準管理規約では、利害関係のある議題について、借りている人が事前に通知したうえで総会に出席して意見を述べられる仕組みも示されています。

使い道に納得できないときは、支払いを保留してもいいですか?

おすすめできません。滞納は督促や法的手続きの対象になり、売却時には買主にも請求が及びます。納得できない点は、書面での質問、総会での意見表明、議案への反対票といった形で示すのが筋です。個別の事情がある場合は、マンション管理士などの専門家に相談してください。

すべての質問を見る

出典・参考資料

写真:Photo by Ray Eldath on Unsplash、Photo by JUNHØ on Unsplash

本ページは一般的な確認の視点を整理した編集部記事です。個別の建物・契約・法的判断の確認を代替しません。法令・規約・契約は最新の資料で確認してください。