管理会社・施工会社・設計監理の違い

大規模修繕には、管理組合、管理会社、設計コンサルタント、施工会社が関わります。それぞれの役割と契約関係、設計監理方式と責任施工方式の違い、国が注意を促してきたコンサルタントの利益相反の問題まで、一次資料をもとに整理します。

まず押さえたいこと:提案・施工・確認・決定を担う人を分ける

この記事の要点

  1. 01肩書きではなく、契約で決まった業務範囲を確認する
  2. 02発注方式ごとに「誰が工事を確認するか」が変わる
  3. 03コンサルの報酬の出どころと利害関係を書面で確かめる
  4. 04最終的に決めるのは管理組合。総会での説明が前提
この記事の目次
テーブルの上の図面を指さしながら打ち合わせをする二人の手元

4者の役割は、契約書で決まる

大規模修繕の打ち合わせには、管理会社のフロント担当、設計事務所の担当者、施工会社の営業担当などが同じテーブルにつきます。誰もが「管理組合のために」と話しますが、それぞれが誰と契約し、誰から報酬を受け取っているかは違います。まずはそこを整理しておきましょう。

立場主な役割根拠になる契約
管理組合工事の発注者。工事内容・施工会社・資金計画を決め、総会で承認を得る管理規約・総会決議
管理会社日常の管理事務、理事会運営の補助。大規模修繕の企画や調整を担う場合もある管理委託契約(契約外の業務は別途取り決め)
設計コンサルタント劣化の調査・診断、設計(仕様書・数量書の作成)、施工会社選定の補助、工事監理設計・監理業務の委託契約
施工会社工事を請け負い、工程・品質・安全を管理して完成させる工事請負契約

「管理会社がやってくれるはず」「コンサルが見てくれているはず」という思い込みが、後で「そこは契約に入っていません」という行き違いにつながります。管理会社の業務範囲については管理会社に任せること、管理組合で決めることも参考にしてください。

管理会社の担当者に確かめておきたいこと

管理会社が大規模修繕の準備に関わる場合は、「どこまでが今の委託費の範囲で、どこからが別料金か」「施工会社やコンサルタントの候補を紹介する場合、紹介先から報酬を受けるか」「グループ会社が施工の候補に入るか」の三つを最初に聞いておくと、その後の話がかみ合います。聞きにくい内容ですが、管理会社にとっても説明の機会になり、後の誤解を防げます。

工事現場の前で交通誘導を行う青い制服の警備員
現場の安全管理は施工会社の役割です。誰が何に責任を持つかを契約で確かめます。

発注方式ごとの長所と注意点を表で比べたい場合は、大規模修繕工事の全体像をまとめた記事の発注方式の項目も参考にしてください。

設計監理方式と責任施工方式、何が違うのか

発注方式は大きく二つに分けられます。設計と施工を別の会社に任せる設計監理方式と、調査・設計・施工を1社にまとめて任せる責任施工方式です。管理会社が元請となって施工会社に発注する形をとる組合もあります。

設計監理方式、責任施工方式、管理会社主導の3つの発注方式について、管理組合と設計コンサル・施工会社・管理会社の契約関係を並べて比較した図
主な発注方式と契約関係の例。実際の形は組合ごとに異なります。
方式よい点気をつけたい点
設計監理方式同じ仕様で複数社を比べやすい。施工とは別の立場の専門家が工事を確認する設計・監理の費用が別にかかる。コンサルタントの中立性が前提になる
責任施工方式窓口が1社で分かりやすい。調査から施工まで話が早い工事を確認する役も同じ会社の中にある。価格の妥当性を外から確かめにくい
管理会社主導建物の履歴をよく知っている。日常管理との連携がとりやすい管理会社が施工を請け負う立場と、組合を補助する立場を兼ねる

国土交通省は2026年9月28日の周知文書で、近年の大規模修繕では、管理組合が設計コンサルタントに調査・設計や工事業者の選定支援などを委託する「設計・監理方式」が広く採用されていると説明しています。そのうえで、この方式を採用する場合はコンサルタントの中立性を確保し、適正な手続の下で受注者を選定することが重要だとしています。

どの方式が正解ということはありません。大切なのは、選んだ方式の弱点を管理組合が理解し、それを補う手立てを用意しておくことです。

方式を決める前に、理事会で話し合っておきたいこと

  • 理事や修繕委員に、建築の知識がある人や時間を割ける人がどれくらいいるか
  • 前回の大規模修繕をどの方式で行い、何がうまくいき、何に困ったか
  • 工事の妥当性を、施工会社以外の誰に確認してもらうか

設計コンサルタントの仕事の中身と、業務量の見方

公正取引委員会は2026年9月の公表資料で、設計コンサル業務を「施工業者の選定補助等の業務」とし、劣化状況の調査・診断、見積りを取るための設計図書の作成、工事監理の全部または一部を含むものと説明しています。

国土交通省が平成30年5月に公表した「マンション大規模修繕工事に関する実態調査」(134社・944事例を集計)では、設計コンサルタント業務の業務量(人・時間)の内訳は、工事監理が40.3%で最も多く、設計31.8%、調査・診断15.2%、施工会社選定への協力8.1%と続きます。

設計コンサルタント業務の業務量内訳の横棒グラフ。工事監理40.3%、設計31.8%、調査・診断15.2%、施工会社選定への協力8.1%、長期修繕計画の見直し3.6%、その他1.0%
出典:国土交通省「マンション大規模修繕工事に関する実態調査」(平成30年5月公表)の概要資料をもとに作成。

同じ調査の公表資料は、管理組合が事前に検討した方がよいポイントとして、設計コンサルタントの業務量が著しく低く抑えられていないか、特に業務量の多くを占める工事監理が低すぎないかを挙げています。調査では、業務量は「〜100人・時間」が30.3%、「100〜200人・時間」が31.1%と、工事ごとのばらつきも大きいことが示されています。コンサル料の見積もりを受け取ったら、監理のために現場に来る頻度や人数、検査の回数を具体的に聞いてみてください。

聞いておきたいこと

  • 工事期間中、現場に来るのは週に何回か。1回あたり何時間か
  • 担当する技術者の氏名と資格。途中で交代する場合の連絡方法
  • 検査の種類(下地、中間、竣工など)と、報告書の形式
  • 施工会社の選定補助で、どこまでを担い、どこからを管理組合が決めるか

国が以前から注意を促してきた「利益相反」の問題

設計監理方式は、うまく機能すれば管理組合の強い味方になります。一方で、国は平成29年(2017年)の時点で、この仕組みを悪用する例に注意を促していました。

国土交通省が平成29年1月27日に出した通知は、管理組合の利益と相反する立場に立つ設計コンサルタントの存在が指摘されているとして、次のような事例を紹介しています。

  • 最も安いコンサルタントに依頼したところ、実際に調査・設計をしていたのは施工会社の社員だった
  • 設計会社が候補5社のうち特定の1社にだけ少ない数量を伝え、その会社の見積もりが安くなるようにしていた
  • 自社にバックマージン(裏の手数料)を支払う施工会社が受注できるよう不適切な工作を行い、割高な工事費や過剰な工事項目・仕様に誘導するため、格安のコンサルタント料金で受託していた

そして2026年9月28日、公正取引委員会は関東地区の事案で、設計コンサル業者と施工業者に排除措置命令などを出しました。公表資料によれば、コンサル業者は設計予算などの情報を受注予定者側に提供し、受注予定者の意向を踏まえて業務を行っていたとされています。また、工事を受注した施工業者は原則として契約価格の5%を目安とする金額をコンサル業者に支払っていたと示されています。

公取委は、こうした手数料の支払いは提供される情報の内容等によっては施工業者間の競争をゆがめるおそれがあるとして、関係する事業者団体に会員への周知を申し入れました。国土交通省も「マンション大規模修繕工事の発注等の適正化に関する検討会」を設置し、2026年10月19日に第1回を開催すると公表しており、今後の動きも注視したいところです。

利害関係を確かめるための具体的な方法

コンサルタントの独立性は、口頭の約束では確かめられません。公取委の事案でも、受注予定者の決定や手数料の支払いは、管理組合との契約とは別のところで行われていたとされています。選定の段階と契約の段階で、書面に落とし込んでおくことが大切です。

  1. 選定時に報酬の考え方を聞くコンサル料の算定根拠と業務量(人・時間)を出してもらい、他社と比べて極端に安い場合は理由を尋ねます。
  2. 施工会社からの報酬がないことを書面で確認する紹介料・手数料・協力金など、名目を問わず施工会社から金銭を受け取らない旨を委託契約に入れます。
  3. 候補会社との関係を開示してもらう資本関係、役員の兼任、継続的な取引などがあれば、候補リストを出す前に申告してもらいます。
  4. 選定の経緯を報告させる候補を選んだ理由、送付資料、辞退の経緯を書面で報告する義務を契約に書きます。

国交省の平成29年通知には、設計費は安いものの工事とセットでの契約を条件としていた2社を選ばず、利益相反的な提案をしてきた設計会社を除外して選定した管理組合の事例も紹介されています。「安いから」だけで決めない判断が、結果として組合の利益を守った例です。

コンサルタント選定の面談で使える質問例

「これまで担当した物件で、施工会社から紹介料や協力金などを受け取ったことはありますか」「今回候補になりそうな施工会社と、資本関係や継続的な取引はありますか」「監理のために現場に来る頻度と、担当者の氏名を教えてください」

注意管理組合の役員自身が施工会社やコンサルタントと関係を持つ場合もあります。マンション標準管理規約(令和7年改正)第37条の2は、役員が利益相反取引をしようとするときに、理事会で重要な事実を開示し承認を受けるよう定めています。

最終的に決めるのは管理組合、という前提を崩さない

専門家に多くを任せても、決める責任は管理組合に残ります。標準管理規約第48条では、修繕積立金の取崩しを伴う計画修繕などの「特別の管理」の実施は総会の決議事項とされています。理事会は第55条にもとづいて修繕委員会などの専門委員会を設け、調査や検討を任せることができますが、委員会は結果を理事会に具申する立場です。

決議の要件も確認しておきましょう。2026年4月1日施行の改正区分所有法にあわせた標準管理規約第47条では、形状または効用の著しい変更を伴わない共用部分の工事は、議決権総数の過半数を有する組合員が出席し、出席組合員の議決権の過半数で決める普通決議の対象です。一方、著しい変更を伴う工事は、出席組合員とその議決権の各4分の3以上による特別決議が必要です。どちらに当たるか迷う工事がある場合は、早めに専門家へ相談してください。総会の準備は総会の進め方と準備で扱っています。

令和7年改正の標準管理規約コメントは、修繕委員会が工事請負契約など多額の発注に関わる意思決定に直接関与するため、部外者が委員になりすまして検討を妨げる事態を防ぐよう、委員候補者の本人確認を適切に行うことが有効だとしています。

理事会では、提案する人、確認する人、承認する人を一覧にしておくと、誰がどこまで責任を持つかが見えやすくなります。例えば「仕様案はコンサルタントが作成、修繕委員会が確認、理事会で承認、総会で決議」といった具合です。

総会で聞かれやすい質問に備える

「コンサルタントはどうやって選んだのか」「施工会社から何か報酬を受けていないか」「コンサルタントと施工会社の関係は確認したか」。これらに書面で答えられるよう準備しておくと、住民の信頼につながります。

役割と利害関係の確認リスト

発注方式採用する方式と、その弱点を補う手立てを決めたか
管理会社の範囲大規模修繕で担う業務が委託契約内か別契約かを確認したか
コンサルの業務量監理の頻度・人数・検査回数が具体的に示されているか
報酬の出どころ施工会社から金銭を受け取らない旨を契約に入れたか
関係の開示候補会社との資本・人的・取引関係の申告を受けたか
選定の報告候補選定の理由と辞退の経緯を書面で受け取るか
役員の利益相反標準管理規約第37条の2に沿って開示・承認したか
決定の流れ提案・確認・承認・決議の担当を一覧にしたか

判断に迷うときは、国交省が案内する住まいるダイヤル(住宅リフォーム・紛争処理支援センター)やマンション管理センターの相談窓口、自治体の専門家派遣制度などを活用できます。

確認メモを開く・印刷する

無料修繕工事の費用が気になる方へ

その見積もり、本当に適正ですか?

工事項目・数量・単価・諸経費を、無料で確認します。必要な施工と監理は守りながら、理事会で質問すべき点を整理します。

  • 確認は無料
  • 見積書を送るだけ
  • 理事会の判断材料に
無料で見積もりをチェック サービスの内容を見る →

工事費・積立金の引き下げや、施工品質・不正の有無を保証するものではありません。

よくある質問

監理を依頼したら管理組合は何もしなくてよい?

監理者は工事が設計どおりに行われているかを確認しますが、仕様の変更や追加工事の承認、居住者への説明、支払いの判断は管理組合が行います。報告の受け取り方や承認の手順、記録の保管方法を、委託契約の時点で決めておくことを勧めます。

設計監理方式なら不正は起きないのですか?

そうとは限りません。2026年9月の公取委の事案は、管理組合が設計コンサル業者に業務を委託したうえで発注した工事が対象でした。方式そのものより、コンサルタントの中立性と、管理組合が選定の経緯を把握しているかどうかが問われます。

管理会社に大規模修繕を任せるのは問題ですか?

問題があるとは限りません。建物の履歴を知る管理会社が関わる利点もあります。ただし施工を請け負う立場と組合を補助する立場を兼ねる場合は、見積もりの妥当性を第三者に確認してもらうなど、チェックの仕組みを用意しておくと安心です。

施工会社が無料で劣化診断をしてくれると言っています。

無料の診断は、その会社が工事を受注することを前提にしている場合があります。診断結果が工事範囲を決める材料になるため、別の専門家に内容を確認してもらうか、診断と施工を分けて依頼するかを検討してください。受けること自体が悪いわけではありません。

コンサル料は安いほうがよいのではありませんか?

安さ自体は悪くありませんが、国交省の平成29年通知は、格安の料金で受託し、施工会社からのバックマージンで補う事例に注意を促しています。業務量(人・時間)や監理の頻度を確認し、極端に安い場合は理由を尋ねてください。

すべての質問を見る

出典・参考資料

写真:Photo by ThisisEngineering on Unsplash、Photo by Mateo Krossler on Unsplash

本ページは一般的な確認の視点を整理した編集部記事です。個別の建物・契約・法的判断の確認を代替しません。法令・規約・契約は最新の資料で確認してください。