理事会の年間スケジュールをつくる

毎回の理事会がその場の相談で終わってしまうのは、一年の見通しがないからかもしれません。決算と総会を起点に逆算し、契約更新・点検・計画の見直しを並べた年間予定表のつくり方を、具体的な日付の例で示します。

まず押さえたいこと:会計年度の終わりから総会日を逆算する

この記事の要点

  1. 01通常総会は新年度開始から2か月以内が標準の目安
  2. 02招集通知の発送日から逆算して議案確定日を決める
  3. 03年1回・数年に1回の業務を一枚の表に載せる
  4. 04毎回の理事会は「定例項目+今月のテーマ」で組む
この記事の目次
日付が大きく印字された日本のカレンダー

起点は「会計年度の終わり」と通常総会

理事会の一年は、会計年度の終わりから始まる、と考えると整理しやすくなります。国土交通省の標準管理規約(令和7年10月改正)では、理事長は通常総会を毎年1回、新会計年度の開始以後2か月以内に招集することとされています(42条3項)。収支決算案は監事の会計監査を経て通常総会で承認を得る(59条)、収支予算案も通常総会に提出して承認を得る(58条1項)という流れです。

もう一つの起点は、役員の任期です。通常総会で役員が改選されるマンションでは、総会の直後に新しい理事会が始まり、最初の理事会で理事長などの役職を決めることになります。つまり年間予定表は「前の理事会から受け取り、次の理事会に渡す」までを一続きで描く必要があります。

つまり、3月末で会計年度が終わるマンションなら、4月から5月にかけて決算・監査・議案作成・総会が集中します。この時期に何をいつまでに終えるかを先に決めてしまえば、残りの月は計画的な検討に使えます。

4月から翌3月を会計年度とする理事会の年間スケジュール例。4〜6月は決算・監査・通常総会・役職互選、7〜9月は決議の実行・点検結果・長期修繕計画の確認、10〜12月は管理委託契約・保険・次年度事業計画、1〜3月は予算案・議案書・引き継ぎ簿
年間スケジュールの一例。会計年度や総会の時期はマンションの規約に合わせて置き換える

国土交通省「令和5年度マンション総合調査」によると、総会を「年に1回開催している」管理組合は89.9%、「年に2回以上」は6.4%でした。多くのマンションでは、年1回の通常総会が組合員全体で物事を決める唯一の機会です。そこに間に合わない議案は、臨時総会を開かない限り一年待つことになります。

通常総会を待てない案件のために、臨時総会という方法もあります。標準管理規約では、理事長は必要と認めるときに理事会の決議を経ていつでも臨時総会を招集できます(42条4項)。ただし開催には準備の手間も費用もかかるため、年間予定の段階で「通常総会にまとめられるものはまとめる」意識を持っておくと負担が減ります。

2か月以内新会計年度開始から通常総会まで(標準管理規約42条3項)
2週間前総会の招集通知の発送期限(同43条1項)
89.9%総会を年1回開催(令和5年度マンション総合調査)

3月決算・5月下旬総会なら、いつ何をするか

具体的な日付で逆算してみます。会計年度が4月1日〜翌3月31日、通常総会を5月の最終日曜日に開くマンションを想定した例です。

  1. 1〜2月:議題の洗い出し今期の理事会で「総会にかける」と決めた事項、規約改正の要否、役員改選の方法を確認する。
  2. 2〜3月:予算案・事業計画案の作成管理会社から原案を受け取り、前年実績との差や大きな支出を理事会で確認する。
  3. 4月上旬:決算の締め管理会社が決算書案を作成。会計担当理事が内訳を確認する。
  4. 4月中旬:監事の監査通帳や残高証明と決算書の突き合わせ。指摘事項は議案書に反映する。
  5. 4月下旬:理事会で議案を確定標準管理規約では、決算案・予算案・その他の総会提出議案は理事会の決議事項(54条1項)。
  6. 5月上旬:招集通知の発送標準管理規約では会日の2週間前まで。発送日から逆算して印刷・封入の日程を決める。
  7. 5月下旬:通常総会終了後に議事録を作成し、署名・保管・結果の周知へ。
注意2026年4月1日施行の改正区分所有法により、総会の招集通知ではすべての議案について「議案の要領」を示す必要があり、通知から会日までの期間は規約で1週間より短くすることができなくなりました。緊急時に「5日前」まで短縮できるとしていた規約の定めは、法律に抵触するため使えません(法務省民事局資料、令和8年4月)。

総会が終わった後の1か月

総会が終わるとひと息つきたくなりますが、この1か月にやることも少なくありません。議事録の作成と署名、決議結果の掲示や配布、可決された工事や契約の発注準備、新役員への引き継ぎが重なります。とくに「理事会に一任」とされた事項は、新しい理事会の最初の議題として予定表に入れておきます。議事録の作り方は議案・議事録の基本で詳しく扱っています。

年に1回・数年に1回の仕事を一枚にまとめる

総会以外にも、周期の決まった仕事があります。毎年担当が変わる理事会では、こうした「たまにしかない仕事」ほど抜け落ちます。周期と確認先を一枚の表にしておくと、次の理事会にもそのまま渡せます。

業務周期の目安確認先・根拠
消防用設備等の点検機器点検は6か月ごと、総合点検は1年ごと消防法に基づく点検基準(総務省消防庁)
その他の法定点検・検査設備ごとに異なる管理会社の年間点検計画表
管理委託契約の更新契約期間による契約書の期間・更新条項
損害保険の更新保険期間による保険証券・代理店
長期修繕計画の見直し5年程度ごと長期修繕計画作成ガイドライン(国土交通省)
役員の改選任期ごと(1〜2年が多い)管理規約の任期条項
組合員名簿・緊急連絡先の確認年1回以上が望ましい管理会社・名簿の担当理事

名簿の更新は後回しにされがちです。令和5年度マンション総合調査では、組合員名簿を整備している管理組合は86.0%ですが、変更のたびに更新しているか年1回以上内容を確認しているのは68.7%でした。災害時の安否確認にも使う情報なので、総会の出欠確認に合わせて年1回見直す、といった形で予定に組み込めます。

管理委託契約は、満了の直前に更新案を示されてそのまま承認、となりがちです。内容を見直したいなら、満了の半年ほど前から委託業務の範囲や費用を確認し始めると、他社の提案を比べる時間も取れます。契約書のどこを見るかは管理委託契約の見方を参考にしてください。

長期修繕計画の見直しは、修繕積立金の額にも関わる大きなテーマです。国土交通省の長期修繕計画作成ガイドライン(令和6年6月改定)は、計画を5年程度ごとに見直すこととしています。前回の見直し年を確認し、次の見直しをどの年度の事業計画に入れるかを決めておきましょう。詳しくは長期修繕計画の記事をご覧ください。

毎回の理事会は「定例項目+今月のテーマ」で組む

令和5年度マンション総合調査では、理事会を「月に1回程度」開いている管理組合が35.7%、「2か月に1回程度」が27.3%でした。どちらの頻度でも、毎回同じ順番で進める定例項目を決めておくと、議論が散らかりにくくなります。

壁に掛けられた月めくりのカレンダー
年間の予定を全員が見える形にしておくと、議題の優先順位を話し合いやすい

定例項目の例(30分程度)

  • 前回議事録の確認と、決定事項の実行状況
  • 月次の収支報告と、管理費等の滞納状況
  • 点検・工事・修理の進捗と、管理会社からの報告
  • 住民からの要望・苦情と、回答の状況

前回の議事録案は、次の理事会の前に出席者へ回覧しておくと、当日の確認が数分で終わります。修正が必要な点はその場で直し、署名まで済ませてしまうのが効率的です。

今月のテーマ(60分程度)

年間予定表から、その月に扱うテーマを1〜2件だけ選びます。たとえば7月は「長期修繕計画の現状確認」、10月は「管理委託契約の内容確認」というように、あらかじめ割り振っておけば、担当理事が資料を読む時間も確保できます。

議題の出し方を決めておく

理事や住民が議題を出したいとき、いつまでに誰に伝えればよいかを決めておくと、当日の「ちょっといいですか」で時間が延びるのを防げます。たとえば「理事会の1週間前までに理事長と管理会社へ」と決め、資料が間に合わない議題は次回に回す運用です。急ぎの案件は例外として扱い、その理由を議事録に残しておきます。

標準管理規約は、理事長が一定の期間ごとに職務の執行状況を理事会に報告する定めを置いています(38条4項。コメントでは「3か月に1回以上」等の例)。定例項目の中に理事長報告の時間を組み込んでおくと、この定めにも自然に沿えます。

大規模修繕が近い年は、別の時間軸を重ねる

大規模修繕工事は、調査・診断から設計、施工会社の選定、総会決議、着工まで、1年以上かけて準備することが珍しくありません。通常の年間予定とは別に、修繕の検討スケジュールを重ねて管理します。全体の流れは大規模修繕の進め方と全体スケジュールで解説しています。

このとき大事なのは、「どの総会で何を決めるか」を先に置くことです。工事の実施と予算を通常総会で決議したいなら、見積もりの比較や住民説明会はその前に終えておく必要があります。逆算すると、前年の秋には施工会社の募集を始めていないと間に合わない、という場合もあります。

工事費に修繕積立金を充てる場合、標準管理規約では修繕積立金の取崩しも総会の決議事項です(48条10号)。工事の実施と取崩しを同じ総会で決めるのか、借入れが必要になるのかも、早めに管理会社や設計者と確認しておきたい点です。

国土交通省の総合調査では、専門委員会を設置している管理組合のうち86.7%が「大規模修繕や長期修繕計画に関する委員会」でした。理事会の定例業務と並行して検討を進めるなら、修繕委員会を置いて役割を分けるのも一案です。見積もりの比較にかける時間も予定に入れておきましょう。複数社から見積もりを取る段取りは相見積もりの取り方にまとめています。

予定表を「次の理事会に渡せる形」で残す

年間予定表は、今期の理事会のためだけのものではありません。月ごとに「やること」「資料を受け取る時期」「担当」「実績」を書く欄を用意しておけば、年度末にはそのまま次期理事会への引き継ぎ資料になります。

  1. 4月の理事会で骨組みをつくる前年の予定表と議事録をもとに、12か月分の行を用意する。
  2. 管理会社の点検計画を取り込む点検日と報告書の受領時期を転記する。
  3. 毎回の理事会で実績欄を埋める終わったこと、ずれたこと、次期に送ることを書く。
  4. 年度末に振り返る時期が合わなかった業務は、次年度の予定を前後に動かす。

実績欄には「予定より1か月遅れた理由」も一言添えておくと役立ちます。決算書の完成が毎年遅れる、点検報告書の受け取りが総会直前になる、といった傾向が見えれば、次の理事会は最初から日程に余裕を持たせられます。

予定表は紙1枚、表計算ソフトの1シートに収まる程度が使いやすい大きさです。細かすぎると更新されなくなります。はじめての理事会で何から手をつけるかははじめての理事会、何から始める?、総会当日の準備は総会の進め方と準備で扱っています。

年間予定表に入っているか確認

会計年度開始日・終了日と、決算の締め日
通常総会開催日、議案確定の理事会、招集通知の発送日
監査監事の監査日と、指摘事項を反映する期限
予算予算案・事業計画案を理事会で検討する月
点検消防用設備など法定点検の実施月と報告書の受領月
契約管理委託契約・保険の満了日と、見直しを始める月
計画長期修繕計画の前回見直し年と次回の予定
役員任期満了と、次期役員の選び方を決める時期
引き継ぎ年度末の振り返りと引き継ぎ簿の更新日

表の中で日付が入らない項目があれば、それが最初に管理会社へ確認すべき点です。「いつ決まるのか分からない」ことも、予定表に書いておけば忘れられずに済みます。

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よくある質問

毎月必ず理事会を開く必要がありますか?

開催頻度は管理規約や理事会の申し合わせで決めるもので、一律の決まりはありません。令和5年度マンション総合調査では月1回程度が35.7%、2か月に1回程度が27.3%でした。案件が少ない時期は間隔を空け、総会前や工事の検討中は増やすなど、年間予定表と合わせて調整するのが現実的です。

通常総会を新年度開始から2か月を過ぎて開いてしまいました。問題ですか?

標準管理規約は「新会計年度開始以後2か月以内」としていますが、実際の期限は各マンションの規約の定めによります。規約に反する時期になった場合は、理由と今後の対応を総会で説明し、次年度の日程を前倒しで組むのが基本です。決議の効力に不安がある場合は、マンション管理士や弁護士に相談してください。

年度の途中で予算にない支出が必要になったら、どうしますか?

標準管理規約では、収支予算を変更するときは理事長が案を臨時総会に提出して承認を得るとされています(58条2項)。ただし、災害等で総会の開催が困難な場合の応急的な修繕工事などは理事会で決議できる定めもあります。どの手続きになるかは理事会で決めることの記事で整理しています。

管理会社が年間予定表をつくってくれません。頼んでもいいのでしょうか?

点検や契約更新の予定は管理会社が把握していることが多いため、一覧で出してもらうよう依頼するのは自然なことです。どこまでが委託業務に含まれるかは管理委託契約で確認できます。予定表の最終的な管理と優先順位の判断は、理事会が持っておくのがよいでしょう。

役員が全員入れ替わる年は、予定表をどう引き継げばいいですか?

全員交代の場合は、総会の前に旧理事会が予定表と引き継ぎ簿を更新し、新理事会の最初の会議で説明する時間を取るのが確実です。旧役員の一人に次期の最初の理事会へ同席してもらう、半数改選に切り替える規約改正を検討する、といった方法もあります。予定表の実績欄が埋まっていれば、説明は短く済みます。

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出典・参考資料

写真:Photo by Zhuo Cheng you on Unsplash、Photo by Alan Jiang on Unsplash

本ページは一般的な確認の視点を整理した編集部記事です。個別の建物・契約・法的判断の確認を代替しません。法令・規約・契約は最新の資料で確認してください。