マンション管理会社の選び方と変更の手順
マンション管理会社の選び方は、任せたい業務を書き出すことから始まります。登録・処分歴の調べ方、大手と中小の違い、委託費値上げへの向き合い方、管理会社のリプレイス(変更)の手順と引継ぎまで、理事会で使える質問とともに整理します。
この記事の要点
- 01分譲時の管理会社を続ける組合は69.1%、変更した組合は24.5%
- 02登録は企業情報検索、処分歴はネガティブ情報等検索サイトで確認できる
- 03値上げ提案は比較表と代替案で中身を確かめてから判断する
- 04解約の申入れは3か月前が目安。総会と重要事項説明から逆算する
この記事の目次

マンション管理会社の選び方は「任せたい業務」の整理から
マンション管理会社の選び方で最初にすべきことは、会社を比べることではなく、自分たちが「何を任せたいか」を書き出すことです。会計や管理費の収納だけを任せたいのか、管理員の常駐が必要なのか、長期修繕計画の見直しや大規模修繕の準備まで支援してほしいのか。任せる範囲が決まらないまま見積もりを取ると、各社の提案がばらばらになり、金額の比較ができません。
国土交通省の令和5年度マンション総合調査では、管理業者に委託している管理組合のうち69.1%が、分譲時に分譲会社が示した管理会社に委託を続けていました。その後に管理会社を変更した組合は24.5%です。築年数が古いほど変更の割合は高く、昭和49年以前に完成したマンションでは53.5%が管理会社を変えていました。管理会社は分譲時に決まっているのが普通ですが、管理組合が選び直せる相手でもあります。
仕様書を作ると、選び方がぶれない
任せたい業務は、国土交通省の「マンション標準管理委託契約書」(令和7年12月12日改訂)の区分に沿って整理すると漏れが出にくくなります。標準契約書は、管理会社の業務を事務管理業務・管理員業務・清掃業務・建物・設備等管理業務の4つに分け、別表で作業内容や頻度を定めています。現在の契約書の別表をもとに、「続けたい業務」「増やしたい業務」「減らしてよい業務」に印を付けたものが、そのまま見積もり依頼の仕様書になります。契約書の読み方は管理委託契約の見方、管理会社の役割はマンション管理の基本で解説しています。
管理会社を比べるときに見る7つの視点
見積もりの金額を比べる前に、会社としての基本と、担当者の体制を確認します。次の表は、理事会で比較するときの視点をまとめたものです。
| 視点 | 確認する方法 | 見ておきたいこと |
|---|---|---|
| 登録と処分歴 | 国交省の企業情報検索システム、ネガティブ情報等検索サイト | マンション管理業者として登録があるか(有効期間5年)、最近5年の行政処分 |
| 担当者(フロント)の体制 | 提案時の面談で質問 | 1人が何組合を担当しているか、交代時の引き継ぎ方法 |
| 管理業務主任者 | 重要事項説明の際に主任者証を確認 | 説明・報告を主任者が行う体制か |
| お金の管理 | 契約書・重要事項説明書 | 修繕積立金の保管口座が管理組合名義か、印鑑等を誰が持つか |
| 報告の質 | 現在の受託組合の月次報告の書式を見せてもらう | 収支・滞納・点検結果・未完了事項がわかる形か |
| 緊急対応 | 提案書、契約書の緊急時の条項 | 夜間・休日の受付窓口、駆けつけまでの流れ |
| 工事との関わり方 | 提案書、重要事項説明 | 工事を自社やグループで受ける場合の内訳の説明、相見積もりへの対応 |
マンション管理適正化法は、管理会社に国の登録を義務づけ(第44条、有効期間5年)、事務所ごとに、受託している管理組合30組合につき1人以上の専任の管理業務主任者を置くよう定めています(同法施行規則第61条)。また、修繕積立金を管理会社の財産と分けて管理し、保管口座の印鑑等を原則として管理会社が保管しないこと(施行規則第87条)も義務です。提案の段階でこれらへの対応を具体的に説明できるかどうかは、会社の姿勢を見る手がかりになります。
登録と処分歴は、国交省のサイトで調べられる
マンション管理業者の登録情報は、国土交通省の「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」で検索できます。行政処分の情報は「国土交通省ネガティブ情報等検索サイト」で、最近5年分が公開されています。処分歴があるからといって直ちに不適格とは限りませんが、その内容と、その後どう改善したかは質問してよい事項です。
2025年12月改訂の標準契約書で増えた確認ポイント
令和7年12月改訂の標準管理委託契約書では、管理会社が総会の承認なく管理組合以外から紹介手数料などを受け取ってはならないこと、理事会が求めれば相見積もりを取得すること、自社や関連会社が工事を受注する場合も工事費用の内訳や積算根拠を説明することが望ましいことなどが盛り込まれました。候補の会社が新しい標準契約書に沿った契約案を出しているかも、比較の材料になります。
マンション管理会社は大手がいい?規模で選ぶときの考え方
マンション管理会社の大手を選ぶか、中小・独立系を選ぶかは、多くの理事会が迷う点です。ただ、規模そのものより、自分たちのマンションに合う体制かどうかで判断するほうが失敗が少なくなります。一般的な傾向を整理すると次のようになります。
| 比べる点 | 規模の大きい会社で見られる傾向 | 規模の小さい会社で見られる傾向 |
|---|---|---|
| 緊急対応・設備 | 24時間の受付センターや技術部門を自社で持つことが多い | 協力会社と連携して対応する形が多い |
| 事務の標準化 | 書式やシステムが整っている一方、個別の要望には社内ルールの壁がある | 柔軟に合わせやすいが、担当者個人の力量に左右されやすい |
| 担当者 | 異動や交代が比較的多い | 同じ担当者が長く続く場合がある |
| グループ会社 | 工事や保険をグループ内で手がけることがある | 外部の会社に発注する前提のことが多い |
これはあくまで傾向で、同じ会社でも支店や担当者によって対応は変わります。分譲会社系の会社は、新築時の設計図書や施工の経緯を把握している強みがある一方、工事を関連会社が受注する場面では、利益相反に気を配る必要があります。どの会社を選ぶ場合も、担当者と直接面談し、自分たちのマンションの課題をどう扱うかを聞くことが欠かせません。
また、令和5年度マンション総合調査で、区分所有者が管理に満足している理由として最も多かったのは「マンション管理業者が良いので」(69.9%)、次いで「管理員が良いので」(49.0%)でした。住民の満足度は、会社の看板よりも、日々接する担当者や管理員の働きぶりに左右されやすいことがうかがえます。
「この物件を担当する方は、ほかに何組合を担当していますか」「担当者が替わるとき、引き継ぎはどのように行い、理事会にどう伝えますか」「大規模修繕の施工会社を選ぶとき、御社はどこまで関わり、関連会社が入札に参加する場合はどう扱いますか」
委託費の値上げを提案されたら、変更の前に確かめること
管理会社を見直すきっかけで多いのが、管理委託費の値上げ提案です。近年は、人件費や物価の上昇を理由とする改定の提案が続いています。厚生労働省によると、令和8年度の地域別最低賃金の改定の目安(2026年7月28日公表)どおりに改定されると、全国加重平均は1,176円で、前年度から55円の引上げになります。管理員や清掃員の人件費が委託費の大きな部分を占める以上、値上げそのものは不自然ではありません。
大切なのは、値上げの理由と中身が対応しているかを確かめることです。標準管理委託契約書のコメントも、管理員業務や清掃業務の労働条件を見直す際に、働き方改革関連法の趣旨を説明して理解を促すことが望ましいとしています。
- 比較表を求める業務区分ごとに「現行・改定後・差額・理由」を並べた表を出してもらいます。
- 業務の変化を確認する管理員の勤務日や時間、清掃の頻度、点検の内容が変わるかを確認します。
- 代替案を試算してもらう勤務日数の調整、清掃の一部を外部に切り出すなど、複数の案で金額を出してもらいます。
- 相場を確かめる同じ仕様書で他社の見積もりを取り、金額の妥当性を確認します。
- 総会で選べる形にする改定を受け入れる案と見直し案を並べ、住民が判断できるようにします。
他社の見積もりを取った結果、今の会社が妥当だとわかることもあります。リプレイス(管理会社の変更)は手段の一つであり、目的ではありません。日頃の付き合い方で改善できることは管理会社との付き合い方にまとめています。
管理会社のリプレイス(変更)の手順とスケジュール
管理会社のリプレイスは、準備から切り替えまで1年近くかかることも珍しくありません。標準管理委託契約書では、更新しない場合や解約する場合の申出・申入れを3か月前までに書面で行う形になっているため、総会の時期から逆算して日程を組みます。
| 時期の目安 | 理事会の作業 | 総会・住民への説明 |
|---|---|---|
| 12〜9か月前 | 不満や課題の整理、仕様書の作成、候補会社への見積もり依頼 | 理事会だよりで検討開始を知らせる |
| 9〜6か月前 | 書類審査、面談(プレゼン)、現管理会社との条件交渉 | 住民説明会やアンケートで意見を聞く |
| 6〜4か月前 | 候補会社の決定、重要事項説明の日程調整 | 総会議案の準備 |
| 3か月前まで | 現管理会社に解約(または不更新)を書面で申し入れ | 総会で新しい管理委託契約の締結を決議 |
| 切替えまで | 引継ぎ書類・鍵・口座の確認、住民への連絡 | 口座振替の変更などを案内 |
選定の公平さを保つ評価表
候補会社を比べるときは、面談の前に評価の項目と配点を理事会で決めておきます。たとえば「業務の提案内容」「担当者の体制」「お金の管理と報告」「緊急対応」「金額」の5項目に分け、理事それぞれが採点して持ち寄る方法です。金額だけで決めると、安さの理由が業務の削減だった、ということが後からわかる場合があります。逆に、印象だけで決めると、住民に選定理由を説明できません。
理事や修繕委員の知人が勤める会社が候補に入る場合は、標準管理規約の利益相反取引の考え方に倣い、その関係を理事会で開示し、採点から外れてもらうなどの配慮をしておくと、後で疑念を持たれにくくなります。現管理会社も候補に含め、同じ仕様書で提案してもらうのが公平です。
総会と重要事項説明の順番
新しい会社と契約する前には、マンション管理適正化法第72条により、管理会社が説明会を開き、管理業務主任者が重要事項を説明します。説明会の1週間前までに、重要事項と説明会の日時・場所を記した書面が区分所有者全員に交付されます。管理委託契約の締結はマンション標準管理規約(令和7年10月改正)第48条で総会の決議事項とされているので、重要事項説明と総会の日程を連動させます。総会の準備は総会の進め方と準備を参考にしてください。
管理会社の変更で失敗しないための引継ぎ
管理会社を変更すると決めたら、切り替えの数か月がいちばん気を使う時期になります。標準管理委託契約書は、管理会社が契約終了時までに、管理組合または管理組合が指定する者に管理事務の引継ぎを行うと定めています。何を受け取るかを一覧にして、旧会社と新会社の双方に渡しておくと漏れを防げます。
- 会計帳簿、通帳・印鑑の保管状況、未収金と滞納者の一覧
- 管理規約・使用細則、総会・理事会の議事録
- 設計図書、長期修繕計画、修繕履歴、点検報告書
- 鍵、共用部分の設備の取扱説明書、保守契約の一覧
- 組合員名簿・居住者名簿(個人情報の取扱いに注意)
- 進行中の案件(修繕の見積もり、住民からの要望、保険事故など)
新しい会社との最初の1年は、月次報告の内容と、約束した業務が実際に行われているかを理事会で確認します。担当者に期待することを最初の理事会で伝え、議事録に残しておくと、後で認識のずれが起きにくくなります。管理組合と管理会社の役割分担は管理会社に任せること、管理組合で決めること、管理組合の基本は管理組合とは?、大規模修繕との関わりは大規模修繕工事とは?で確認できます。
管理会社の選定・変更で確認すること
| 確認する項目 | 見ておきたいこと |
|---|---|
| 仕様書 | 任せたい業務の範囲と頻度を、現行契約の別表をもとに整理したか |
| 登録 | マンション管理業者として登録があり、有効期間内か |
| 処分歴 | 最近5年の行政処分の有無と、その後の改善内容 |
| 担当者 | 担当する組合の数、交代時の引継ぎ方法 |
| お金の管理 | 保管口座の名義と印鑑等の保管者 |
| 工事との関わり | 関連会社が受注する場合の内訳説明と相見積もりへの対応 |
| 日程 | 解約・不更新の申入れ期限と総会・重要事項説明の時期 |
| 引継ぎ | 帳簿・図面・鍵・進行中の案件の一覧を作ったか |
比較の過程と選んだ理由を議事録に残しておくと、住民への説明だけでなく、次に契約を見直す理事会の大きな助けになります。
確認メモを開く・印刷する無料修繕工事の費用が気になる方へ
工事項目・数量・単価・諸経費を、無料で確認します。必要な施工と監理は守りながら、理事会で質問すべき点を整理します。
- 確認は無料
- 見積書を送るだけ
- 理事会の判断材料に
よくある質問
マンション管理会社はどうやって選べばいいですか?
まず任せたい業務を仕様書にまとめ、同じ条件で複数社から見積もりを取ります。そのうえで、登録と処分歴、担当者の体制、修繕積立金の管理方法、月次報告の書式、緊急対応、工事との関わり方を比べます。金額だけでなく、担当者との面談で自分たちの課題への対応を確かめることが大切です。
マンション管理会社は大手の方が安心ですか?
大手は緊急対応の体制や事務の標準化が整っていることが多い一方、担当者の交代が多い、個別対応に社内ルールの壁があるといった面もあります。規模だけで判断せず、実際に担当する人の担当組合数や経験、引継ぎの仕組みを確認して選んでください。
管理会社を変更するにはどれくらい期間がかかりますか?
仕様書づくりから見積もり、面談、住民説明、総会決議、引継ぎまでを含めると、半年から1年程度を見込むのが現実的です。標準管理委託契約書では解約の申入れは3か月前までとされているため、総会の時期から逆算して早めに検討を始めます。
管理委託費の値上げは断れますか?
契約条件の変更は双方の合意が前提なので、そのまま受け入れる義務はありません。ただ、人件費の上昇など理由がある場合も多いため、業務区分ごとの比較表と代替案を求め、必要なら他社の見積もりも取って妥当性を確かめます。合意できなければ、業務内容の見直しや管理会社の変更も検討できます。
管理会社の行政処分歴はどこで調べられますか?
国土交通省の「ネガティブ情報等検索サイト」で、マンション管理業者に対する最近5年分の行政処分を事業者名などで検索できます。登録の有無は「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」で確認できます。
出典・参考資料
- 国土交通省|令和5年度マンション総合調査結果〔概要編〕 ↗
- 国土交通省|マンション標準管理委託契約書(令和7年12月12日改訂) ↗
- e-Gov法令検索|マンションの管理の適正化の推進に関する法律 ↗
- 国土交通省|建設業者・宅建業者等企業情報検索システム(マンション管理業者) ↗
- 国土交通省|ネガティブ情報等検索サイト(マンション管理業者) ↗
- 厚生労働省|令和8年度地域別最低賃金額改定の目安について ↗
写真:Photo by Georgi Kalaydzhiev on Unsplash
本ページは一般的な確認の視点を整理した編集部記事です。個別の建物・契約・法的判断の確認を代替しません。法令・規約・契約は最新の資料で確認してください。