管理会社との付き合い方
対立でも丸投げでもなく、依頼・回答・確認が見えるやりとりをつくる。管理会社への依頼の伝え方、優先順位の分け方、管理員との接し方、担当交代への備え、不満があるときの進め方を整理します。
この記事の要点
- 01管理に満足している区分所有者は61.3%(令和5年度調査)
- 02依頼は場所・状況・求める対応・期限を一つのメモに
- 03管理員への依頼は、窓口を通して契約の範囲内で
- 04不満があれば、改善依頼から総会判断まで段階を踏む
この記事の目次

満足している区分所有者は6割。不満の理由は管理会社だけではない
管理会社との関係は、対立でも丸投げでもなく、お互いの役割を前提にした「仕事の相手」として考えるのが出発点です。国土交通省の令和5年度マンション総合調査では、現状の管理に「非常に満足」「やや満足」と答えた区分所有者は合わせて61.3%でした。満足の理由は「マンション管理業者が良いので」が69.9%、「管理員が良いので」が49.0%と、管理会社や管理員の働きが評価の中心になっています。
一方、不満と答えた人の理由で最も多かったのは「一部の居住者の協力が得られにくいので」56.4%でした。「管理組合役員が不慣れなので」24.2%に続き、「マンション管理業者が良くないので」は21.2%です。管理がうまくいかない原因は、管理会社だけにあるとは限らないことがわかります。
区分所有者が管理に疑問を持ったときの相談先も、「マンション管理業者」が71.2%で最も多く、「理事長(又は理事)」45.4%を上回っています。住民にとって管理会社は最も身近な窓口です。だからこそ、理事会と管理会社のやりとりが整理されていないと、住民の声が行き場を失ったり、同じ要望が何度も繰り返されたりします。
良い関係は、管理会社の努力だけでは成り立ちません。理事会が事前に資料を読んで臨む、決めるべきことを先送りしない、依頼の窓口を決めておく、といった管理組合側の準備があってこそ、管理会社の提案や報告が生きてきます。この記事では、そのための具体的なやりとりの型を紹介します。

「対応が悪い」ではなく、事実と依頼を一つにまとめて伝える
「最近、対応が悪い」「前にも言ったのに」という伝え方では、管理会社は何をすればよいのかわかりません。不具合の場所、気づいた日時、状況、写真、そして求める対応を一つのメモにまとめるだけで、やりとりの回数は大きく減ります。
| 項目 | 書き方の例 |
|---|---|
| 場所 | 3階東側共用廊下、312号室前の天井照明 |
| 日時と状況 | 9月20日夜から点滅。22日に住民から2件の連絡あり |
| 写真・資料 | 点滅している照明の写真2枚 |
| 求める対応 | 原因の確認と修理の見積り。応急対応が可能なら先に実施 |
| 回答の期限 | 9月30日までに対応予定日を連絡 |
窓口を一本にする
標準管理委託契約書第8条は、管理組合から管理会社への指示は、法令に基づく場合を除き、理事長などの管理者等か管理組合が指定した役員が、管理会社の指定した担当者に対して行うと定めています。理事一人ひとりや住民が、それぞれ管理員に直接頼みごとをすると、指示が重なったり、費用の承認が抜けたりします。要望は理事会や窓口役員に集めてから、まとめて伝える流れにしておきます。
依頼の最後に「いつまでに、どこまで」を必ず添えます。管理会社にはこう伝えると誤解がありません。「9月30日までに、原因と対応予定日だけ先に教えてください。修理の費用が予算を超える場合は、理事会で判断します」。
緊急・期限付き・理事会で検討、の3つに分けて共有する
すべての依頼を同じ重さで扱うと、本当に急ぐものが埋もれます。案件を3つに分けて、連絡の方法とタイミングを管理会社と決めておくと、お互いに動きやすくなります。
| 区分 | 例 | 連絡のしかた |
|---|---|---|
| 緊急 | 漏水、停電、エレベーターの閉じ込め、火災報知設備の異常 | 電話で即時。管理会社の緊急窓口と理事長に同時に連絡 |
| 期限付き | 点検の日程調整、総会資料の準備、保険の更新手続き | メールや書面で期限を明記。受け取りの返信をもらう |
| 理事会で検討 | 設備の更新、規則の見直し、管理費の改定 | 理事会の議題として資料を依頼。事前配布の期限を決める |
理事会に管理会社の担当者(フロント担当)が同席している場合は、冒頭に「前回からの宿題」の確認時間をとると、未完了の案件が自然に浮かび上がります。担当者が同席しない方式なら、理事会の数日前までに報告資料を送ってもらい、質問をまとめて返す運用が現実的です。
年に一度、関係そのものを振り返る
日々のやりとりとは別に、年1回の管理事務報告の機会を「振り返りの場」として使う方法もあります。管理事務報告は、事業年度の終了後に管理業務主任者が管理の状況を説明するもので、マンション管理適正化法で義務づけられています。報告を聞くだけで終わらせず、理事会から次のような問いを投げかけると、翌年の改善点が見えてきます。
- 今年度、対応に時間がかかった案件はどれで、原因は何だったか
- 点検で指摘された事項のうち、未対応のものはいくつ残っているか
- 来年度、管理組合として判断が必要になりそうな事項は何か
- 理事会の運営で、管理会社から見て改善してほしい点はあるか
連絡手段は、電話で済ませた内容も後からメールで要点を送ってもらうなど、記録が残る形を基本にします。これは相手を疑うためではなく、理事や担当者が交代したときに経緯をたどれるようにするためです。
管理員やフロント担当は「仕事の相手」。頼めることには範囲がある
管理員は、住民が最も顔を合わせる管理会社の人です。その分、契約の範囲を超えた頼まれごとが集まりやすい立場でもあります。標準管理委託契約書の別表第2は、管理員の業務を、受付等(届出の受理、鍵の管理など)、点検(外観の目視点検、照明の点灯・消灯など)、立会い、報告連絡などに整理し、勤務日・勤務時間・休日も契約で定める形にしています。
- 勤務時間外の対応や、専有部分内の作業を管理員に直接頼まない
- 住民同士のトラブルの仲裁を、管理員個人に任せない
- 管理員への要望や注意は、理事会・窓口役員を通して管理会社に伝える
- 感謝や良かった点も、同じ窓口から伝える
管理員の休日や休暇中の対応も、契約で確認しておきたい点です。標準管理委託契約書の別表第2では、日曜・祝日などの休日や、夏期・年末年始などの休暇を定め、休暇をとるときは管理会社があらかじめ管理組合に届け出る形になっています。代わりの人が来るのか、窓口を閉めるのかを事前に知っておけば、住民への掲示もしやすくなります。
令和7年12月改訂の標準管理委託契約書コメントは、契約上の誠実義務には、管理会社・管理組合の双方がハラスメントに該当する言動を行わないことが含まれると明記しました。あわせて、管理会社が法令に反するような助言をしてはならないことも示されています。お互いに節度をもって仕事をすることが、契約上の前提として位置づけられたといえます。
また、同じコメントは、管理員業務や清掃業務の労働条件を見直す際に、時間外労働の上限規制や年5日の年次有給休暇の取得といった制度の趣旨を管理組合に説明し、理解を促すことが望ましいとしています。管理員の休暇や代行体制について説明を受けたときは、こうした背景も踏まえて聞くと話がかみ合います。
未完了の一覧は、担当者が代わっても残る「組合の記憶」
理事の任期は1〜2年、フロント担当も数年で異動することがあります。人が入れ替わるたびに「その件は聞いていません」となるのを防ぐには、依頼の履歴を管理組合の側で持っておくことです。
| 依頼日 | 内容 | 依頼者 | 管理会社の回答 | 状況 | 次回確認日 |
|---|---|---|---|---|---|
| 9/22 | 3階東側廊下の照明点滅 | 窓口理事 | 9/25部品交換予定 | 対応中 | 10/5 |
| 8/30 | 駐輪場の放置自転車の整理 | 理事会 | 掲示と所有者確認を実施 | 完了待ち | 次回理事会 |
| 7/15 | 外壁タイルの浮きの調査見積り | 理事会 | 見積り2社分を受領 | 理事会で検討中 | 11月理事会 |
一覧は、理事会の議事録に添付するか、共有フォルダに置いて次期の理事に引き継ぎます。議事録の残し方は議案・議事録の基本で詳しく扱っています。
不満があるときは、いきなり変更ではなく段階を踏む
令和5年度マンション総合調査では、管理業者に委託している組合のうち69.1%が分譲時に分譲業者が提示した管理会社に委託を続けており、その後に管理会社を変更した組合は24.5%でした。変更は珍しいことではありませんが、会計・鍵・書類・点検の契約などの引き継ぎを伴う大きな判断です。まずは改善の機会をつくり、比較の材料をそろえてから判断します。
- 事実を整理して改善を依頼する未対応の項目、日付、契約書の該当箇所を一覧にし、改善を書面で依頼します。
- 上長や支店と面談する担当者個人の問題か会社の体制の問題かを見極め、改善策と期限を書面で受け取ります。
- 契約条件の見直しを協議する業務の範囲や頻度、費用の組み替えで解決できないかを話し合います。
- 他社からも提案を受ける現行と同じ仕様書で見積りを依頼し、業務内容と費用を比べます。
- 総会で判断する管理委託契約の締結は総会の決議事項です。変更する場合は、解約の申入れ期限(標準管理委託契約書では3か月前)と引き継ぎの期間を逆算して日程を組みます。
新しい管理会社と契約する場合は新規契約の扱いになるため、マンション管理適正化法に基づき、説明会の1週間前までの重要事項説明書の交付と、管理業務主任者による説明会が必要です。旧会社からは、標準管理委託契約書第23条第4項に沿って、契約終了時までに管理事務の引き継ぎを受けます。会計帳簿、設計図書、鍵など引き継ぐ物の目録を早めに作っておくと、移行がスムーズです。
管理会社とのやりとりで確認すること
| 窓口 | 管理会社に依頼する役員と、管理会社側の担当者が決まっているか |
|---|---|
| 依頼の形 | 場所・日時・状況・写真・求める対応・期限がそろっているか |
| 緊急連絡 | 夜間・休日の緊急窓口と、理事長への連絡順 |
| 記録 | 電話の依頼も、要点がメールや書面で残っているか |
| 理事会での確認 | 前回からの宿題を毎回確認しているか |
| 未完了一覧 | 依頼日・回答・状況・次回確認日が一覧になっているか |
| 管理員への依頼 | 契約の範囲と勤務時間を理事会で共有しているか |
| 改善の手順 | 不満があるときの段階と、判断する場が決まっているか |
やりとりの仕組みは、一度決めれば毎年使えます。役員が交代するときは、窓口と未完了一覧の引き継ぎを最初の理事会の議題にしておきましょう。
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よくある質問
管理会社に不満があるときは、変更が先ですか?
まずは契約上の業務と実際の対応を整理し、改善を依頼するのが先です。担当者の上長との面談や契約条件の見直しで解決することもあります。変更を検討する場合も、同じ仕様書で他社の提案を比べ、解約の申入れ期限や引き継ぎ期間を確保したうえで、総会で判断してください。
住民が直接管理会社に苦情を言ってもよいですか?
住民が管理会社に連絡すること自体は問題ありません。ただし、管理会社への指示は理事長などの管理者等や指定された役員から行うのが標準的な形です。個別の要望が理事会の方針とぶつからないよう、住民からの連絡は管理会社から理事会へ報告してもらい、対応方針は理事会で決める流れにしておくと混乱が減ります。
管理員にちょっとした用事を頼むのは問題ですか?
管理員の業務は、管理委託契約の別表で範囲と勤務時間が決まっています。専有部分内の作業や個人的な用事は契約の範囲外で、ほかの業務に支障が出ることもあります。必要な支援がある場合は、理事会を通じて管理会社に相談し、有料サービスや業務の追加として整理するのが適切です。
フロント担当者が頻繁に代わり、話が伝わりません。どうすればよいですか?
担当者の交代そのものは避けられないことが多いため、管理組合の側で依頼の履歴を持つのが有効です。依頼日・内容・回答・次回確認日の一覧をつくり、交代時には一覧をもとに引き継ぎの確認を求めます。交代が続いて業務に支障があるなら、その事実を示して管理会社の上長に体制の説明を求めてください。
出典・参考資料
- 国土交通省|令和5年度マンション総合調査結果〔概要編〕 ↗
- 国土交通省|マンション総合調査(令和5年度・データ編を含む) ↗
- 国土交通省|マンション標準管理委託契約書(令和7年12月12日改訂) ↗
- 国土交通省|マンション標準管理規約(令和7年10月改正) ↗
写真:Photo by Giorgio Trovato on Unsplash、Photo by Khang Nguyen on Unsplash
本ページは一般的な確認の視点を整理した編集部記事です。個別の建物・契約・法的判断の確認を代替しません。法令・規約・契約は最新の資料で確認してください。