修繕とは?改修との違いと大規模改修の考え方

修繕とは、劣化した建物を新築時の水準まで戻す工事です。改修工事は、そこに性能を上げる「改良」を加えたもの。国交省のガイドラインとマニュアルの定義をもとに、修繕工事と改修工事の違い、大規模改修の考え方、決議やお金の扱いを整理します。

まず押さえたいこと:修繕は「戻す」、改修は「戻して良くする」

この記事の要点

  1. 01修繕は性能を新築時と同等の水準に回復させる工事
  2. 02改修は修繕に改良(グレードアップ)を加えて性能を改善する工事
  3. 03大規模修繕は回数を重ねるほど改良の割合を大きくするのが国交省の考え方
  4. 04計画修繕や加工の小さい改良は普通決議、著しい変更は特別決議
この記事の目次
バルコニーが並ぶ都市部の集合住宅

修繕とは?「新築時の水準に戻す」工事

修繕とは、傷んだり劣化したりした建物や設備を直し、使える状態に戻すことです。マンションの修繕では、この「どの水準まで戻すか」が重要になります。国土交通省の「長期修繕計画作成ガイドライン」(令和6年6月改定)は、長期修繕計画に載せる修繕工事を「建物及び設備の性能・機能を新築時と同等水準に維持、回復させる修繕工事を基本とする」と定めています。つまり、マンションでいう修繕の基準線は新築時の状態です。

一方で、同じガイドラインは、区分所有者の要望などに応じて「建物及び設備の性能を向上させる改良工事」を計画に加えることも求めています。新築時に戻すだけでなく、新築時よりも良くする工事がある、ということです。この2つを合わせたものが「改修」です。

修繕・改良・改修・補修の言葉の整理

言葉の使い分けは、国土交通省の「マンション改修マニュアル」(令和8年3月改訂)と長期修繕計画作成ガイドラインの定義に沿うと混乱しません。

補修
ひび割れやタイルの浮きなど、部分的な不具合を直すこと。日常的に行う小さな補修は、長期修繕計画の「推定修繕工事」には含めない扱いです。
修繕
劣化した性能・機能を、新築時と同等の水準まで回復させる工事。
改良
建物各部の性能・機能をグレードアップする工事。材料や設備を新しい種類に取り替えたり、新しい機能を付け加えたりすることです。
改修
マンション改修マニュアルの定義では「修繕及び改良(グレードアップ)により、建築物の性能を改善する変更工事」。修繕と改良をセットにした考え方です。
大規模修繕工事
ガイドラインでは「建物の全体又は複数の部位について行う大規模な計画修繕工事(全面的な外壁塗装等を伴う工事)」。

現場では「修繕改修」「改修修繕」と並べて呼ぶこともありますが、中身は「直す部分」と「良くする部分」の組み合わせです。見積書や提案書を読むときは、どの項目が修繕で、どの項目が改良なのかを分けて考えるのが出発点になります。マンション管理全体の中での位置づけはマンション管理の基本で整理しています。

修繕工事と改修工事の違いを部位ごとに比べる

修繕工事と改修工事の違いは、目的と比べる基準にあります。修繕工事は「劣化したものを元に戻す」、改修工事は「元に戻したうえで、今の暮らしに合う性能に引き上げる」工事です。マンション改修マニュアルは、同じ部位でも修繕と改良で工事の中身が変わる例を示しています。

部位修繕工事の例改良(グレードアップ)の例
屋根防水劣化・漏水した防水層の全面的な修繕防水仕様の向上、屋根の外断熱防水、排水能力の向上
外壁仕上げ吹付け塗装の再塗装、タイルの洗浄と損傷部の修繕塗料や仕上げ材の性能向上、外壁の外断熱改修
シーリング劣化したシーリング材の打替えシーリング材の性能のグレードアップ
建具玄関ドアの塗装塗替え、金物の取替え耐震玄関ドアへの取替え、ピッキング対策
サッシサッシや付属金物の修繕・取替え断熱・遮音など性能の高いサッシへの取替え

表を見るとわかるように、改修工事は修繕工事と別の工事というより、修繕の機会に「ついでに性能を上げる」ものが多くあります。足場を組む大規模修繕のタイミングは、外壁や窓まわりの改良を同時に行うのに都合がよく、別々に行うより仮設費用を抑えやすくなります。

「修繕で足りる」状態と「改修が必要な」状態

修繕で足りるのは、劣化が原因の不具合で、新築時の性能に戻せば住民の困りごとも解消する場合です。たとえば屋上からの漏水や鉄部のさびは、防水層の更新や塗装の塗替えで解決します。一方、断熱性能の低さによる結露、段差の多い共用廊下、オートロックのないエントランスなどは、新築時に戻しても解決しません。こうした「もともとの性能が今の水準に合わない」問題は、改良を伴う改修工事でしか解消できない点が判断の分かれ目になります。

リフォーム・リノベーションとの関係

住戸の中を直す「リフォーム」「リノベーション」は、多くの場合、区分所有者が自分の専有部分について行う工事です。この記事で扱う修繕・改修は、外壁や屋上、廊下、給排水の立て管など、管理組合が管理する共用部分の工事です。費用も個人の財布ではなく、管理組合の修繕積立金から出るのが基本です。工事項目ごとの中身は大規模修繕の工事内容で詳しく解説しています。

大規模改修とは?築年数とともに増える「改良」

大規模改修とは、耐震補強やエレベーターの設置、外断熱化などの省エネ改修、共用部分の大がかりな改造など、建物の性能や機能を総合的に引き上げる規模の大きな改修工事を指します。マンション改修マニュアルは、改修を2つのレベルに分けて説明しています。

  • レベル1:計画修繕(大規模修繕)の工事項目ごとに、既存の性能をグレードアップする改良工事を織り込むもの。
  • レベル2:耐震化・防災・高齢化対応・省エネなど、工事項目を横断して検討が必要な大規模な改修工事。

さらに、構造躯体を残して1棟全体をスケルトン状態にし、共用部分と全ての専有部分を更新する「建物更新」(いわゆる一棟リノベーション)という方法もあります。これは2026年4月1日施行の改正区分所有法で、建替えと同じく区分所有者と議決権の各5分の4以上で決める「建物更新決議」が設けられたもので、大規模改修とは手続きの重さがまったく違います。

回数を重ねるほど、改良の割合を大きく

マンション改修マニュアルは、一般化している大規模修繕工事について「実施回数を追うにつれ、改良の割合を大きくした改修工事として実施する必要がある」としています。築30年、40年と経つと、劣化だけでなく、断熱性能やバリアフリー、防犯設備、宅配ボックスの有無などが今の水準と比べて見劣りする「陳腐化」が進むためです。

約158.8万戸築40年以上の分譲マンション(2025年末・国交省推計)
約313.1万戸10年後(2035年末)の見込み
27.9%省エネ改修工事を実施したことがある管理組合(令和5年度マンション総合調査)

国土交通省の推計では、分譲マンションのストックは2025年末で約723.6万戸、そのうち築40年以上が約158.8万戸で、10年後には約2.0倍に増える見込みです。令和5年度マンション総合調査では、省エネ改修工事を実施したことがある管理組合は27.9%で、その内容は照明器具のLED化が94.6%と大半でした。バリアフリー改修工事の実施経験は19.5%で、手すりの設置が77.7%と最も多くなっています。改修の余地は、まだ多くのマンションに残っているといえます。

修繕か改修かで変わる総会の決議

修繕か改修かは、言葉の問題だけでなく、総会の決め方にも関わります。共用部分の工事は、区分所有法上「形状又は効用の著しい変更を伴う」かどうかで、決議の要件が変わるからです。2026年4月1日に施行された改正区分所有法で、集会の決議は出席者の多数決を基本とする形に整理されました。

工事の性格決議(標準管理規約の例)工事の例
計画修繕・著しい変更を伴わない改良普通決議:議決権総数の過半数の出席で、出席組合員の議決権の過半数鉄部塗装、外壁補修、屋上防水、給水管の更新、窓ガラス・玄関扉の一斉交換、手すりの設置
形状・効用の著しい変更特別決議:組合員総数・議決権総数の各過半数の出席で、出席者の各4分の3以上エレベーターの増築、集会室の増築、階段室をエレベーターに改造
著しい変更のうちバリアフリー化・瑕疵の除去出席者の各3分の2以上高齢者等の移動の負担を軽くするための変更など

マンション改修マニュアルは、定期的に行う計画修繕工事は工事規模の大小にかかわらず普通決議で実施できると考えられるとしています。材質や性能を上げる工事でも、建物の基本的構造部分を大きく取り壊すような加工を伴わないものは、普通決議で実施可能とされています。例として、柱や梁に炭素繊維シートを巻く耐震改修、階段へのスロープ併設や手すりの設置、配線を既存の管路に通すオートロックの設置、防犯カメラの設置、EV充電設備の設置などが挙げられています。

注意著しい変更に当たるかどうかは、変更を加える箇所や範囲、程度を総合的に見て個別に判断されます。自分たちの管理規約が改正法に合わせて見直されているかも含め、判断に迷う議案はマンション管理士や弁護士に確認してから総会にかけてください。総会の運び方は総会の進め方と準備で解説しています。

修繕改修のお金と長期修繕計画への組み込み方

修繕改修にかかるお金は、原則として修繕積立金から出します。マンション標準管理規約(令和7年10月改正)第28条は、修繕積立金を取り崩せる使いみちとして「一定年数の経過ごとに計画的に行う修繕」に加えて、「敷地及び共用部分等の改良又は変更」を挙げています。改良工事も、積立金の本来の使いみちに含まれているわけです。

ただし、積立金の額は長期修繕計画をもとに決まっています。計画に改良工事が入っていなければ、改修を追加した分だけ資金が足りなくなります。長期修繕計画作成ガイドラインの様式は、修繕項目とは別に「性能向上工事項目」の例として、耐震、バリアフリー、省エネルギー、防犯のほか、インターネット環境の整備、直結増圧給水方式への変更、電気容量の増量、宅配ボックスの設置、エレベーターの戸開走行防止装置の設置などを示しています。

改修を計画に組み込む順番

  1. 困りごとを集めるアンケートや理事会への要望から、結露、段差、防犯、設備の古さなど「修繕では解決しない不満」を拾います。
  2. 建物の調査・診断を行う劣化の程度と、現在の性能(断熱、耐震、設備容量など)を専門家に確認してもらいます。
  3. 修繕と改良を分けて費用を出す見積もりや概算を「修繕分」と「改良分」に分けてもらい、改良項目ごとの追加額を把握します。
  4. 長期修繕計画に反映する採用する改良工事を計画に入れ、積立金の額や借入れの要否を見直します。
  5. 総会で段階的に合意を取る検討組織の設置、調査・設計費の支出、工事実施と、段階ごとに決議します。

マンション改修マニュアルは、改修工事は準備から工事完成まで一般的に3〜5年程度かかる長期的な取組だとし、合意形成の鍵は資金計画にあるとしています。長期修繕計画の見方は長期修繕計画とは?、積立金の目安は修繕積立金はいくら必要?が参考になります。

理事会で「修繕で足りるか」を話し合うために

理事会で「今回は修繕だけで足りるのか、改修も考えるべきか」を話し合うときは、築年数と大規模修繕の回数、住民の困りごと、資金の3点をそろえて見るのが近道です。1回目の大規模修繕なら修繕中心でも、2回目、3回目になるほど改良の検討項目は増えていきます。大規模修繕工事全体の流れと費用の考え方は、柱となる大規模修繕工事とは?費用相場・周期・進め方の全体像にまとめています。

理事会で使える質問の例

「この見積もりのうち、新築時の性能に戻すための修繕と、性能を上げる改良を分けて示してもらえますか」「改良項目を今回見送った場合、次に実施できるのはいつで、そのとき足場代はまたかかりますか」「この工事は普通決議で足りますか、特別決議が必要ですか。その根拠も教えてください」

提案する側に確認するだけでなく、提案の出どころも見ておきます。改修は工事項目が増えるぶん金額も大きくなり、誰が仕様を決め、誰が見積もりを出すのかで結果が変わります。設計・監理を行う専門家と施工会社の役割分担は管理会社・施工会社・設計監理の違いを、改良項目が混ざった見積書の読み方は修繕工事の見積書の見方を確認してください。

注意「せっかく足場を組むから」と改良項目を積み増すと、必要性の低い工事まで入りやすくなります。反対に、修繕だけに絞って改良を毎回先送りすると、陳腐化が進んで住み替えが増え、将来の合意形成が難しくなることもあります。どちらに寄せるかは、住民の意向と資金計画をもとに、総会で説明できる形で決めることが大切です。

修繕と改修を考えるときの確認リスト

確認する項目見ておきたいこと
築年数と修繕の回数次が何回目の大規模修繕か。回数が増えるほど改良の検討が必要
住民の困りごと結露・段差・防犯・設備の古さなど、修繕では解決しない不満
見積もりの区分修繕分と改良分が分けて示されているか
長期修繕計画性能向上工事(改良)が計画に入っているか、積立金に反映されているか
決議の種類普通決議で足りるか、特別決議が必要か。その根拠
管理規約2026年4月施行の改正区分所有法に合わせた見直しが済んでいるか
実施時期足場を使う工事は大規模修繕と同時にできるか

修繕と改良を分けて考える習慣がつくと、見積もりの金額が大きくなった理由や、見送った場合の影響を住民に説明しやすくなります。

確認メモを開く・印刷する

無料修繕工事の費用が気になる方へ

その見積もり、本当に適正ですか?

工事項目・数量・単価・諸経費を、無料で確認します。必要な施工と監理は守りながら、理事会で質問すべき点を整理します。

  • 確認は無料
  • 見積書を送るだけ
  • 理事会の判断材料に
無料で見積もりをチェック サービスの内容を見る →

工事費・積立金の引き下げや、施工品質・不正の有無を保証するものではありません。

よくある質問

修繕と改修の違いは何ですか?

修繕は、劣化した建物や設備の性能を新築時と同等の水準まで回復させる工事です。改修は、修繕に加えて性能や機能をグレードアップする改良を行い、建物の性能を改善する工事を指します。国土交通省のマンション改修マニュアル(令和8年3月改訂)もこの整理を示しています。

大規模修繕と大規模改修は同じ意味ですか?

同じではありません。大規模修繕工事は、外壁塗装などを伴う建物全体や複数部位の計画修繕工事です。大規模改修は、耐震補強やエレベーターの設置、外断熱化など、性能を総合的に高める規模の大きな改修を指します。実際には、大規模修繕の際に改良工事を組み合わせるケースが多く見られます。

改修工事の費用に修繕積立金を使ってもよいのですか?

マンション標準管理規約第28条は、修繕積立金の使いみちに「敷地及び共用部分等の改良又は変更」を含めています。自分たちの管理規約に同じ趣旨の定めがあるか確認してください。ただし、長期修繕計画に入っていない改良を加えると資金が不足しやすいため、計画と積立金の見直しを合わせて検討します。

改修工事には4分の3以上の賛成が必要ですか?

すべての改修工事が特別決議になるわけではありません。建物の基本的構造部分を大きく取り壊すような加工を伴わない改良は、普通決議で実施できると考えられています。エレベーターの増築など形状や効用を著しく変える工事は、出席者の各4分の3以上の特別決議が必要です。個別の判断は専門家に確認してください。

修繕工事の相談はどこにできますか?

建物や工事の技術的な相談は、公益財団法人マンション管理センター(建物・設備の相談 03-3222-1519)や、住まいるダイヤル(03-3556-5147)で受け付けています。管理組合としての進め方は、マンション管理士や建築士など専門家の助言を受けるのも一つの方法です。

すべての質問を見る

出典・参考資料

写真:Photo by alina ozerova on Unsplash

本ページは一般的な確認の視点を整理した編集部記事です。個別の建物・契約・法的判断の確認を代替しません。法令・規約・契約は最新の資料で確認してください。