修繕積立金はいくら必要?

「うちの積立金は高いのか安いのか」。答えは近所の相場ではなく、自分のマンションの長期修繕計画から出ます。国交省ガイドラインの計算式と㎡単価の目安を使い、数字で確かめる手順を解説します。

まず押さえたいこと:月額ではなく「計画期間全体の平均」で比べる

この記事の要点

  1. 01全国平均の月額は、必要額の物差しにならない
  2. 02ガイドラインの目安は「計画期間全体の㎡単価」
  3. 03残高・積立総額・繰入額を床面積と月数で割って比べる
  4. 04機械式駐車場があれば台数に応じて目安を加算する
この記事の目次
眼鏡をかけた白い豚の貯金箱と電卓

「全国平均」と「目安」は、似ているようで別のもの

修繕積立金の話になると、「全国平均は1万3,000円くらいらしい」という数字がよく出てきます。これは国土交通省「令和5年度マンション総合調査」の、月・戸当たりの平均額1万3,054円のことでしょう。ただ、この数字には築年数も規模も積立方式も異なるマンションがすべて混ざっています。段階増額積立方式で、まだ初期の低い額を払っているマンションも含まれた平均です。

自分のマンションの水準を確かめる物差しとして国が示しているのは、「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(令和6年6月改定)の「修繕積立金の額の目安」です。長期修繕計画作成ガイドラインにおおむね沿って作られた長期修繕計画366事例を集め、計画期間全体で必要な工事費を積み立てる場合の、専有面積1㎡当たりの月額として示しています。

白い用紙の上に置かれた黒い電卓とペン
比べるべきは、自分の計画から計算した㎡単価

比べるときのポイントは「今払っている月額」ではなく、「長期修繕計画の期間全体で平均するといくらになるか」です。段階増額で今は安くても、10年後、20年後の増額分まで含めて平均すれば、目安に近いこともあれば、大きく下回っていることもあります。

国交省の同じ調査では、完成年次が2015年以降のマンションの月・戸当たり平均は1万539円と、全体平均を下回っていました。新しいマンションの月額が低いのは、段階増額積立方式の採用が多い(2015年以降では81.2%)ことと無関係ではありません。月額の比較だけで「うちは安い」「高い」と判断しないことが、この記事の出発点です。

積み立てたお金の主な使い道である大規模修繕工事の費用相場や周期は、大規模修繕工事とは?費用相場・周期・進め方の全体像で国の調査の数値とともに解説しています。

ガイドラインの目安表を読む

目安は、建物の階数と建築延床面積で5つに分けて示されています。数字は「事例の3分の2が収まる幅」と「平均値」の2つで、上下6分の1ずつの事例を除いた範囲が幅として示されています。

修繕積立金の目安を示した図。20階未満で延床5,000㎡未満は235〜430円で平均335円、5,000〜1万㎡は170〜320円で平均252円、1万〜2万㎡は200〜330円で平均271円、2万㎡以上は190〜325円で平均255円、20階以上は240〜410円で平均338円
計画期間全体における修繕積立金の平均額の目安(円/㎡・月、機械式駐車場分を除く)。出典:国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(令和6年6月改定)
階数・建築延床面積事例の3分の2が収まる幅平均値
20階未満・5,000㎡未満235〜430円/㎡・月335円/㎡・月
20階未満・5,000㎡以上1万㎡未満170〜320円/㎡・月252円/㎡・月
20階未満・1万㎡以上2万㎡未満200〜330円/㎡・月271円/㎡・月
20階未満・2万㎡以上190〜325円/㎡・月255円/㎡・月
20階以上240〜410円/㎡・月338円/㎡・月

区分の判定に使うのは「建築延床面積」(共用廊下なども含む建物全体の面積)ですが、単価の分母は「専有床面積」です。取り違えやすいので注意してください。規模の小さいマンションほど1㎡当たりの単価が高いのは、戸数が少ないと共用部分の工事費を少ない床面積で分け合うことになるためと考えられます。20階以上の超高層は、特殊な足場が必要になることや共用部分の割合が高いことから、工事費が増える傾向があるとして別の区分になっています。

もう一つ、目安の前提も押さえておきます。集計の対象は、主に区分所有者が自ら住む住居専用のマンションで、主要な修繕工事項目が含まれ、計画期間が新築は30年以上、既存は25年以上の長期修繕計画です。店舗や事務所が入る複合用途型、リゾートマンション、団地型で棟ごとに条件が大きく違う場合などは、目安との比較を参考程度にとどめ、自分の計画の中身で判断する比重を大きくしたほうがよいでしょう。

自分のマンションの「計画期間全体の平均額」を出す

ガイドラインの計算式は次のとおりです。長期修繕計画の収支表があれば、必要な数字はそろいます。

計算式(修繕積立金ガイドライン)

計画期間全体の修繕積立金の平均額(円/㎡・月)=(A+B+C)÷X÷Y
A:計画期間の最初の時点の修繕積立金残高/B:計画期間全体で集める修繕積立金の総額/C:計画期間全体で専用使用料等から繰り入れる総額/X:総専有床面積(㎡)/Y:計画期間(か月)

  1. 計画期間と開始年度を確かめる長期修繕計画の総括表で、計画が何年度から何年度までか(Y)を確認します。30年なら360か月です。
  2. 開始時点の残高を拾う収支表の初年度の「前年度繰越」や「期首残高」がAです。
  3. 積立金収入を合計する収支表の各年度の修繕積立金収入を全期間分足します(B)。段階増額の予定があれば、増額後の収入も含めた合計です。修繕積立基金や一時金を見込んでいる場合は、その扱いも作成者に確認します。
  4. 繰入れを合計する駐車場使用料などからの繰入れの合計がCです。
  5. 床面積と月数で割る(A+B+C)を総専有床面積と月数で割り、目安の表と比べます。

ガイドラインのモデルケース

ガイドラインは、地上10階建て・建築延床面積7,000㎡、70戸(1戸70㎡)で総専有床面積4,900㎡、計画期間30年(360か月)のマンションを例に計算しています。当初残高7,000万円、30年間で集める積立金2億6,460万円、専用使用料等からの繰入れ9,000万円なので、(7,000万+2億6,460万+9,000万)÷4,900㎡÷360か月≒241円/㎡・月。目安の平均値252円、幅170〜320円と比べることになります。

機械式駐車場がある場合の加算

機械式駐車場は修繕費が大きいため、目安に「1台当たり月額の修繕工事費×台数÷総専有床面積」を加算します。1台当たりの額は機種別に示され、たとえば2段(ピット1段)昇降式は6,450円、3段(ピット2段)昇降式は5,840円、エレベーター方式・垂直循環方式は4,645円です。モデルケースは3段(ピット2段)昇降式が30台なので、5,840円×30台÷4,900㎡≒36円。目安は平均252+36=288円、幅206〜356円となり、241円はこの幅に収まっています。

注意駐車場の修繕費を駐車場使用料の会計で別にまかなう仕組みにしている場合は、加算しません。また繰入額Cには、実際に入っている使用料を上回る額を見込まないこと。空き区画が多いのに満車前提の繰入れで計算していると、平均額が実態より高く見えます。

想定例:50戸・築12年のマンションで計算してみる

想定例で幅の下限(268円)まで引き上げるには、1㎡当たり約20円、70㎡の住戸で月1,400円ほど、計画期間全体の平均を上げる必要がある計算です。実際には、工事費の見直しで必要総額を下げる、増額の時期を工夫するなど、組み合わせで考えることになります。

この想定例のように、戸当たり月額では高く見えても、㎡単価と設備条件で比べると不足気味ということがあります。逆に、専有面積が広い住戸の多いマンションでは、月額が高くても㎡単価では標準的ということもあります。

目安の幅の下限は、制度上も意味を持ちます。管理計画認定制度の基準の一つ「計画期間全体での修繕積立金の平均額が著しく低額でないこと」について、ガイドラインは、この下限値(機械式駐車場の加算を含む)を下回る金額から上回る金額へ引き上げたことを、マンション長寿命化促進税制の要件の説明の中で示しています。下限を下回る場合でも、特段の理由を示す理由書を提出して認定を受ける道はありますが、まずは下限との差を把握しておくことが出発点です。

住戸ごとの月額に直すと、どう見えるか

㎡単価に自分の住戸の専有面積を掛けると、目安に沿った月額のイメージがつかめます。20階未満・延床5,000〜1万㎡の平均値252円なら、60㎡で1万5,120円、70㎡で1万7,640円、80㎡で2万160円です。

専有面積200円/㎡・月252円/㎡・月335円/㎡・月
60㎡12,000円15,120円20,100円
70㎡14,000円17,640円23,450円
80㎡16,000円20,160円26,800円

表の252円と335円は目安の平均値、200円は比較のための例です。実際の負担割合は、管理規約で定める共用部分の持分に応じて決まるので、住戸タイプごとの金額は規約と総会資料で確認してください。なお段階増額積立方式の場合、表の金額は「今払う額」ではなく「計画期間を通して平均した額」に相当します。今の月額がこれより低くても、将来の増額でならす設計になっていることがあります。

目安から外れていたら、次に確認すること

目安を下回っているとき

まず疑うべきは、計画に入るべき工事が入っていない可能性です。給排水管やサッシの取替えが計画期間の外にある、工事費の単価が古い、計画期間が30年に満たない、といった理由で必要額が小さく出ていることがあります。長期修繕計画の記事のチェック項目で計画の中身を確かめ、そのうえで不足が確かなら、値上げ前に確認したいことを参考に増額の案を検討します。

目安を上回っているとき

上回っていること自体は問題ではありません。改良工事(耐震・省エネ・バリアフリーなど)を計画に入れている、設備が多い、立地の関係で工事費が高い、といった理由があれば当然です。「目安より高いから値下げを」と考える前に、上回っている理由が工事項目のどこにあるのかを確かめます。そのうえで、工事費の数量や単価に説明のつかない部分がないかを点検するのは、住民の負担を考えるうえで筋の通った順番です。その進め方は修繕費の見直しと修繕積立金の関係で扱います。

目安との比較は、一度計算して終わりではありません。長期修繕計画を見直すたびに、同じ方法で平均額を計算し直して記録しておくと、5年前、10年前と比べて水準がどう動いてきたかが分かります。値上げの議論では、この推移が説明材料として役立ちます。

理事会でこう確認する

「当組合の長期修繕計画で、計画期間全体の修繕積立金の平均額は1㎡当たりいくらですか。機械式駐車場の加算後の目安と比べて、幅のどこに位置していますか。」――管理会社や計画の作成者に、この一文で依頼できます。

必要額を確かめるためのチェックリスト

建物の区分階数(20階以上か)と建築延床面積で、どの目安を使うか
総専有床面積単価計算の分母。延床面積と取り違えていないか
計画期間何か月か。30年以上あるか
当初残高(A)計画期間の開始時点の残高
積立総額(B)将来の増額分を含めた計画期間全体の積立金
繰入額(C)駐車場使用料などの繰入れが実際の収入を超えていないか
機械式駐車場機種・台数と、修繕費をどの会計でまかなうか
目安との比較平均値と幅(下限)に対する位置

計算に必要な数字は、長期修繕計画の総括表と収支表にすべて載っています。表計算ソフトに入れておけば、増額案を比べるときにもそのまま使えます。

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よくある質問

目安より高ければ値下げしてよいですか?

目安だけで結論は出せません。目安はあくまで多数の事例の分布で、建物ごとの工事内容の違いまでは反映していません。高い理由が改良工事や設備にあるなら妥当な場合もあります。長期修繕計画の工事項目と単価の根拠を確認し、将来の収支に余裕があるかを見てから判断してください。

目安の数字は令和6年の改定で変わりましたか?

令和6年6月の改定の主な内容は、段階増額積立方式の適切な引上げの考え方(初期額は均等積立の0.6倍以上、最終額は1.1倍以内)の追加などです。㎡単価の目安の表は、令和3年9月の改訂で示されたものが引き続き掲載されています。

戸当たり月額で比べてはいけないのですか?

戸当たり月額は住戸の広さに左右されるため、マンション同士の比較には向きません。60㎡中心のマンションと90㎡中心のマンションでは、同じ㎡単価でも月額が1.5倍違います。比べるなら㎡単価、しかも計画期間全体の平均額で比べるのがガイドラインの考え方です。

タワーマンションはなぜ別の目安なのですか?

ガイドラインは、地上20階以上の超高層マンションは外壁などの修繕に特殊な足場が必要になるほか、共用部分の占める割合が高いことなどから修繕工事費が増える傾向にあるとして、20階未満とは分けて目安(平均338円、幅240〜410円)を示しています。

計算の結果が目安の幅に収まっていれば安心ですか?

一つの安心材料にはなりますが、それだけでは足りません。計画の工事項目に漏れがあったり、単価が古かったりすれば、計算上の平均額は実態より低く出ます。計画の中身が現状に合っているか、そして工事の年に残高が不足しないかを、収支表とあわせて確認してください。

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出典・参考資料

写真:Photo by Sasun Bughdaryan on Unsplash、Photo by Mediamodifier on Unsplash

本ページは一般的な確認の視点を整理した編集部記事です。個別の建物・契約・法的判断の確認を代替しません。法令・規約・契約は最新の資料で確認してください。