マンションの自主管理とは?委託管理との違い

マンションの自主管理とは、管理会社に委託せず管理組合が自ら管理する形態です。国交省の令和5年度マンション総合調査では5.2%。委託管理との違い、メリット・デメリット、続けるための仕組みと委託への切り替え方を整理します。

まず押さえたいこと:自主管理は「人が代わっても回る」仕組みが鍵

この記事の要点

  1. 01自主管理は管理組合が全ての管理事務を自ら行う形態で、全体の5.2%
  2. 02昭和49年以前に完成したマンションでは31.9%が自主管理
  3. 03費用は抑えやすいが、会計の属人化と担い手不足がリスク
  4. 04一部委託や専門家の活用など、中間の選択肢もある
この記事の目次
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マンションの自主管理とは?管理組合が自ら管理する形態

マンションの自主管理とは、管理会社に管理事務を委託せず、管理組合(区分所有者の団体)が自分たちで管理を行う形態です。管理費の徴収や会計、清掃、設備点検の手配、修繕の計画づくりまでを、理事会や組合員が担います。委託管理と比べて費用を抑えやすい一方、役員の負担が大きく、担い手が減ると管理が滞りやすいのが特徴です。

マンションの管理は、もともと区分所有者全員で構成する管理組合が行うものです。マンション標準管理規約(令和7年10月改正)第33条は、管理組合が業務の全部または一部を「マンション管理業者等第三者に委託し、又は請け負わせて執行することができる」と定めています。委託は「できる」であって義務ではありません。自主管理は、この委託をしない、または一部にとどめる選択です。

管理形態は「全部委託・一部委託・自主管理」の3つ

管理形態中身令和5年度の割合
全部委託基幹事務を含め、管理事務の全てを管理業者に委託72.9%
一部委託基幹事務の一部と、それ以外の事務の一部または全部を管理業者に委託9.8%
自主管理管理組合が全ての管理事務を実施5.2%

割合は国土交通省「令和5年度マンション総合調査」(回答1,589組合)の数値です。このほか、管理業者以外の者に一部を委託する形などもあります。なお、この調査は管理業者の業界団体の会員社を通じた配布が多く、自主管理型は対象の約1割という設計のため、全国の実態より自主管理の割合が低く出ている可能性があります。管理の形態全体の基本はマンション管理の基本で解説しています。

自主管理マンションはどんな物件に多いか

自主管理マンションは、築年数の古いマンションや団地型に多い傾向があります。同じ令和5年度マンション総合調査を完成年次別に見ると、「管理組合が全ての管理事務を実施」と答えた割合は、昭和49年以前に完成したマンションで31.9%、昭和50〜54年で22.0%でした。平成元年以降に完成したマンションでは数%にとどまります。形態別では、単棟型が3.9%、団地型が12.9%です。

5.2%全ての管理事務を管理組合が実施(令和5年度マンション総合調査)
31.9%昭和49年以前に完成したマンションでの割合(同)
12.9%団地型マンションでの割合(同)

古いマンションに多い理由として、分譲当時は管理会社に任せる仕組みが今ほど一般的でなかったこと、小規模で委託費の負担が重いことなどが考えられます。団地型では、住民が自治会活動と一体で管理を担ってきた例も見られます。中古マンションの購入を検討していて「自主管理物件」と書かれていた場合は、こうした背景を踏まえて、管理の実態を確かめることが大切です。

中古で自主管理マンションを買う前に見ること

  • 総会の議事録が毎年作られ、決算と予算が承認されているか
  • 長期修繕計画があり、5年程度ごとに見直されているか
  • 修繕積立金の残高と、管理費等の滞納の状況
  • 消防設備や給水設備などの法定点検の記録が残っているか
  • 役員の選び方(輪番制か、同じ人が続けているか)

自主管理かどうかは、管理費の安さだけで判断しないことも大切です。管理費が安くても、修繕積立金が長期修繕計画に比べて大きく不足していれば、将来の大規模修繕で一時金の徴収や借入れが必要になるかもしれません。逆に、少人数でも熱心な理事会が帳簿と点検記録をきちんと残しているマンションは、委託管理と遜色ない状態を保っていることがあります。数字と記録の両方を見ることで、「自主管理だから不安」「委託だから安心」という思い込みを避けられます。

これらは重要事項説明や管理に関する報告書で確認できるものもあります。わからない点は、仲介する不動産会社を通じて管理組合に確認してもらいましょう。

自主管理と委託管理の違いを業務ごとに比べる

自主管理と委託管理の違いは、「誰が手を動かすか」にあります。どちらの場合も、予算や管理費の額、長期修繕計画、工事の発注などを決めるのは総会です。委託管理では、その準備や日常業務を管理会社が担い、自主管理では理事や組合員が担います。

業務委託管理自主管理
管理費等の徴収・会計管理会社が収納・出納を行い、毎月収支の書面を交付会計担当理事が口座管理、帳簿付け、決算書の作成
滞納への対応管理会社が督促を代行(契約の範囲内)理事会が督促状の送付から法的手続きの検討まで
清掃・管理員管理員や清掃員を管理会社が配置住民の当番、または清掃会社と個別に契約
設備点検点検業者の手配と報告を管理会社が取りまとめ理事会が業者を選び、契約・立会い・報告書の保管
総会・理事会の運営議案書・議事録の作成を管理会社が支援理事が資料作成から記録まで行う
修繕の計画長期修繕計画の見直し提案を管理会社が行うことが多い専門家に依頼するか、理事会で直接進める

マンション管理適正化法は、管理組合の会計の収入・支出の調定と出納、共用部分の維持・修繕に関する企画や実施の調整を「基幹事務」と定めています(第2条第6号)。管理組合から委託を受けてこれらを業として行うには国への登録が必要ですが、区分所有者が自分のマンションについて行う場合は管理業に当たりません(同条第7号)。自主管理は法律上も認められた形です。

自主管理でも「決める場」は同じ

自主管理だからといって、理事長や一部の役員が自由に決めてよいわけではありません。管理費の額、予算・決算、長期修繕計画、修繕積立金の取崩しは、委託管理と同じく総会の決議事項です(標準管理規約第48条)。むしろ管理会社という第三者がいないぶん、議事録を残し、決算書と通帳の残高が一致していることを組合員に示すことが、信頼を保つ前提になります。理事会の役割はマンション理事会とは?で整理しています。

委託管理のときに管理会社に課されているルール

委託管理では、管理会社に法律上の義務がかかります。たとえば、毎月、前月の会計の収支状況の書面を翌月末日までに管理者等へ交付すること、修繕積立金を管理会社の財産と分けて管理し、保管口座の印鑑等を原則として保管しないこと(同法施行規則第87条)などです。自主管理には、このような外部からのチェックの仕組みがありません。同じ水準の透明性を、管理組合が自分たちのルールで確保する必要があります。委託した場合の業務内容は管理会社は何をしてくれる?で詳しく紹介しています。

自主管理のメリットとデメリット

自主管理のメリットとデメリットは、費用と手間の交換条件として整理できます。

メリット:費用、意思決定の速さ、建物への関心

  • 管理費を抑えやすい:管理会社に払う委託業務費や管理報酬がかからず、清掃や点検は必要な分だけ個別に発注できます。
  • 住民の目が届く:業者の選定や見積もりの比較を自分たちで行うため、何にいくら払っているかが見えやすくなります。
  • 決定が早い:小規模で顔の見える関係なら、ちょっとした補修の判断を素早く進められます。

デメリット:属人化、会計リスク、担い手不足

  • 特定の人に頼りがち:長年同じ理事長や会計担当が続くと、引き継ぎができず、その人が退くと管理が止まります。
  • 会計の不正・ミスに気づきにくい:通帳と印鑑を同じ人が持ち、監査が形だけになると、使い込みや記帳ミスが長く見過ごされることがあります。
  • 専門知識が必要な場面に弱い:法定点検の漏れ、長期修繕計画の未見直し、滞納への対応の遅れが起きやすくなります。

令和5年度マンション総合調査では、管理組合運営の将来への不安として「区分所有者の高齢化」が57.6%、「理事の選任が困難」が27.6%でした。昭和49年以前に完成したマンションに限ると、理事の選任が困難は67.0%に上ります。古い自主管理マンションほど、担い手の問題に直面しやすいといえます。

自主管理を続けるための仕組みづくり

自主管理を続けるなら、「人が代わっても回る仕組み」を作ることが要になります。ポイントは、お金、記録、点検の3つです。

  1. 通帳と印鑑を分ける修繕積立金の口座は管理組合名義にし、通帳と届出印を別々の役員が保管します。ネットバンキングを使う場合も、承認者を2人にする設定を検討します。
  2. 毎月の収支を見える化する委託管理で管理会社に義務づけられている「毎月の収支報告」に倣い、月次の収支表を理事会で確認し、掲示や配布で組合員にも共有します。
  3. 監事の監査を実質化する標準管理規約第41条は、監事が業務の執行と財産の状況を監査し、総会に報告すると定めています。通帳の原本と帳簿の突き合わせまで行うことを、監査の手順として決めておきます。
  4. 法定点検の年間表を作る消防用設備等の点検(機器点検は6か月ごと、総合点検は1年ごと)、受水槽がある場合の水道法に基づく検査、建築基準法の定期調査・検査など、時期と契約先を一覧にします。
  5. 書類を一か所に保管する規約、総会議事録、設計図書、修繕履歴、点検報告書を、管理組合の書庫やクラウドなど、個人宅以外にまとめます。
理事会で確認したい質問の例

「今、通帳と印鑑はそれぞれ誰が持っていますか」「直近の消防設備点検はいつで、報告書はどこにありますか」「長期修繕計画を最後に見直したのは何年前ですか」。答えがすぐ出てこない項目が、仕組みを作るべき場所です。

一部委託、または自主管理から委託管理へ移る

自主管理か委託管理かは、二者択一ではありません。会計だけ、清掃だけ、長期修繕計画の見直しだけといった一部委託や、マンション管理士との顧問契約など、負担の重い部分だけを外に出す方法があります。令和5年度マンション総合調査では、専門家を活用しているマンションは41.4%で、活用内容は単発のコンサルティングが65.2%と最も多くなっていました。

自主管理から管理会社へ委託するときの流れ

  1. 任せたい業務を書き出す会計、清掃、点検の手配、総会支援など、委託したい範囲と、自分たちで続ける範囲を分けます。
  2. 同じ条件で見積もりを取る業務範囲を書いた仕様書を作り、複数の管理会社に提示します。
  3. 重要事項説明を受ける管理会社は契約前に説明会を開き、管理業務主任者が重要事項を説明します(マンション管理適正化法第72条)。
  4. 総会で決議する管理委託契約の締結は総会の決議事項です(標準管理規約第48条)。管理費の改定が必要なら同時に諮ります。

委託すれば管理費は上がりますが、役員の負担が減り、法定の報告や分別管理の仕組みが入ります。どちらがよいかは、戸数、役員のなり手、建物の状態で変わります。管理会社の選び方は管理委託契約の見方、管理組合の役割は管理組合とは?、大規模修繕の進め方は大規模修繕工事とは?もあわせて確認してください。

注意自主管理でも、修繕積立金が長期修繕計画に照らして不足していないか、管理規約が2026年4月施行の改正区分所有法に合わせて見直されているかは必ず確認しておきたい点です。判断に迷う場合は、マンション管理士やマンション管理センターの相談窓口を利用してください。

自主管理マンションで確認したいこと

確認する項目見ておきたいこと
通帳と印鑑別々の役員が保管しているか。口座は管理組合名義か
月次の収支毎月の収支表を理事会で確認し、組合員に共有しているか
監事の監査通帳の原本と帳簿を突き合わせているか
法定点検消防設備・給水設備・建築基準法の点検の時期と報告書
長期修繕計画作成済みか、5年程度ごとに見直しているか
滞納督促の手順が決まっているか、3か月以上の滞納がないか
役員の交代同じ人が長く続けていないか、引き継ぎ資料があるか
書類の保管規約・議事録・図面・修繕履歴が個人宅以外にあるか

答えに詰まる項目が多い場合は、その部分だけでも外部に委託するか、専門家の点検を受けることを検討してください。

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よくある質問

マンションの自主管理とはどういう意味ですか?

管理会社に管理事務を委託せず、区分所有者でつくる管理組合が、会計、清掃、設備点検の手配、修繕の計画などを自ら行う管理形態のことです。国土交通省の令和5年度マンション総合調査では、管理組合が全ての管理事務を実施しているのは5.2%でした。

自主管理のマンションは買わないほうがいいですか?

自主管理というだけで避ける必要はありません。総会が毎年開かれ、決算が承認され、長期修繕計画と修繕積立金が整っていれば、きちんと管理されている自主管理マンションもあります。議事録、点検記録、積立金の残高、滞納の状況を確認して判断してください。

自主管理と委託管理では管理費はどれくらい違いますか?

規模や委託する範囲で大きく変わるため、一律の差額は示せません。委託管理では管理会社への委託業務費と管理報酬が加わる一方、自主管理でも清掃や点検は外部に発注するのが一般的です。比較するときは、同じ業務範囲で見積もりを取り、役員の負担も含めて考えます。

自主管理から管理会社に委託するにはどうすればいいですか?

委託したい業務を整理して仕様書を作り、複数の管理会社から見積もりを取ります。契約前には管理会社による重要事項説明があり、管理委託契約の締結は総会で決議します。管理費の改定が必要になる場合は、同じ総会で諮るのが一般的です。

自主管理で困ったときの相談先はありますか?

公益財団法人マンション管理センターは、管理組合の運営や規約に関する相談(03-3222-1517)と、建物・設備の相談(03-3222-1519)を受け付けています。会計の確認や規約の見直しなど継続的な支援が必要なら、マンション管理士に依頼する方法もあります。

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出典・参考資料

写真:Photo by Victoriano Izquierdo on Unsplash

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