マンション管理会社がひどいときの対処法と相談先
マンション管理会社の対応がひどいと感じたら、まず契約や法律の義務を果たしていないのか、期待とのずれなのかを分けます。判断の物差し、改善を求める手順、マンション管理センターや業界団体などの相談先を順に整理します。
この記事の要点
- 01管理に不満がある区分所有者は5.3%、理由が管理業者は21.2%
- 02毎月の収支報告や年1回の管理事務報告は法律上の義務
- 03苦情は記録をそろえ、理事会として書面で申し入れる
- 04相談先は管理センター、管理業協会、国交省、専門家を使い分ける
この記事の目次

マンション管理会社がひどいと感じたら、まず問題を分ける
「マンション管理会社の対応がひどい」と感じたとき、最初にしたいのは、その不満が契約や法律で決まった義務を果たしていない問題なのか、契約にはない期待とのずれなのかを分けることです。前者なら管理会社に是正を求められますが、後者は契約内容の見直しや話し合いで解決する問題です。両方が混ざったまま「とにかくひどい」と伝えても、改善にはつながりにくくなります。
国土交通省の令和5年度マンション総合調査で、現在の管理に「やや不満」「非常に不満」と答えた区分所有者は合わせて5.3%でした。不満の理由で最も多かったのは「一部の居住者の協力が得られにくいので」(56.4%)で、「マンション管理業者が良くないので」は21.2%です。管理組合向けの調査でも、過去1年に「マンション管理業者に係る」トラブルがあったのは1.2%でした。管理会社への不満は、件数としては多くないものの、起きると理事会の負担が大きい問題です。
同じ調査では、管理に疑問を持ったときの相談先として「マンション管理業者」が71.2%と最も多く挙がっています。管理会社そのものに不満がある場合、相談先が見つからずに困る人が出やすいということでもあります。この記事では、判断の物差し、改善の求め方、外部の相談先を順に整理します。管理会社と管理組合の基本的な関係はマンション管理の基本と管理組合とは?で解説しています。
「ワースト」ランキングより、自分のマンションの記録を見る
インターネット上には管理会社の評判やランキングがありますが、同じ会社でも支店や担当者によって対応は大きく変わります。判断の材料にすべきなのは、自分たちのマンションで起きた事実と、契約書・報告書の記録です。
管理会社に法律で義務づけられていること
管理会社の対応を評価するときの物差しになるのが、マンション管理適正化法と管理委託契約書です。適正化法は、管理組合から委託を受ける管理会社に、次のような義務を課しています。
| 義務 | 中身 | 根拠 |
|---|---|---|
| 登録 | 国の登録を受けること(有効期間5年) | 適正化法第44条 |
| 重要事項説明 | 契約前に、管理業務主任者が重要事項を説明する。新規や条件変更の場合は説明会の1週間前までに書面を交付 | 同第72条 |
| 基幹事務の一括再委託の禁止 | 会計の出納や修繕の企画調整などの基幹事務を、まとめて他社に丸投げしない | 同第74条 |
| 財産の分別管理 | 修繕積立金などを自社の財産と分けて管理し、保管口座の印鑑等を原則として保管しない | 同第76条、施行規則第87条 |
| 毎月の収支報告 | 毎月の会計の収支状況の書面を、翌月末日までに管理者等へ交付 | 施行規則第87条第5項 |
| 管理事務の報告 | 事業年度終了後、遅滞なく管理事務報告書を作り、管理業務主任者が説明 | 同第77条、施行規則第88条 |
これらに違反した場合、国土交通大臣は管理会社に必要な指示をし、従わない場合などには1年以内の業務停止を命じることができます(同法第81条・第82条)。たとえば、毎月の収支報告が届かない、管理事務報告が主任者から行われない、といった状態は、単なる「対応が悪い」ではなく、法律上の義務に関わる問題として扱えます。
契約書の別表が「やるべき仕事」の範囲
清掃の頻度、管理員の勤務時間、点検の内容などは、管理委託契約書の別表に書かれています。国土交通省の「マンション標準管理委託契約書」(令和7年12月12日改訂)に沿った契約なら、事務管理・管理員・清掃・建物設備等管理の4つの業務ごとに作業内容が並んでいます。別表にある業務が行われていなければ契約上の問題、別表にない業務を期待していたなら契約の見直しの問題です。契約書の読み方は管理委託契約の見方、業務の全体像は管理会社は何をしてくれる?で確認できます。
管理会社への苦情でよくある不満と確かめ方
管理会社への苦情でよく挙がる不満を、確認する資料と対応の方向に分けて整理します。
| よくある不満 | まず確認すること | 対応の方向 |
|---|---|---|
| 連絡が遅い・返事がない | 依頼した日時と内容、回答期限を伝えたか | 窓口と回答期限のルールを理事会で決めて申し入れる |
| 担当者がよく替わる | 引継ぎの説明があったか、未完了案件が引き継がれたか | 交代時の引継ぎ書の提出を求める |
| 清掃が行き届かない | 別表の清掃箇所と頻度、作業報告 | 契約どおりなら仕様の見直し、未実施なら是正要求 |
| 会計の説明がわからない | 毎月の収支書面、決算書と通帳の残高 | 書面の書式改善と、不明点の書面回答を求める |
| 工事の提案が高い気がする | 見積もりの内訳、ほかの会社の見積もりの有無 | 内訳の説明と相見積もりの取得を求める |
| 住民同士のトラブルに対応しない | 契約上、管理会社が担う範囲か | 管理組合として対応方針を決め、管理会社には事務的な支援を依頼 |
最後の行のように、騒音などの住民間トラブルは、管理会社が当事者として解決する業務ではないことが多く、規約に基づいて理事長が注意や勧告を行うのが基本です(マンション標準管理規約第67条)。「管理会社が何もしない」と感じる場面の中には、そもそも管理組合が判断すべき事柄が含まれていることもあります。
工事の提案には、新しい標準契約書の考え方が使える
令和7年12月改訂の標準管理委託契約書は、理事会が求めれば管理会社が相見積もりを取得すること、管理会社や関連会社が工事を受注する場合も工事費用の内訳や積算根拠を説明することが望ましいこと、総会の承認なく管理組合以外から紹介手数料などを受け取らないことを盛り込みました。修繕工事の金額に疑問がある場合は、この考え方を根拠に説明を求められます。発注の注意点は大規模修繕工事とは?でも解説しています。
管理会社に改善を求める手順と伝え方
不満を改善につなげるには、感情ではなく、事実と依頼をそろえて段階的に伝えることが近道です。
- 事実を記録するいつ、何を依頼し、どう対応されたか(されなかったか)を日付入りで残します。写真やメールも保存します。
- 契約・法律と照らす別表の業務か、法律上の義務か、契約外の期待かを分けます。
- 理事会で方針を決める個人が別々に苦情を言うのではなく、理事会として何を求めるかを決め、議事録に残します。
- 書面で申し入れる求める対応と回答期限を書き、理事長名で担当者に渡します。標準管理委託契約書でも、管理組合からの指示は理事長などの管理者等から管理会社の担当者に行う形です。
- 上長・本社と面談する改善がなければ、支店長や本社のお客様窓口に面談を求め、担当替えや体制の変更を協議します。
- 契約の見直しを検討するそれでも改善しない場合、次の更新で条件を見直すか、他社の見積もりを取って変更を検討します。
「先月○日にお願いした件は、いつまでにご回答いただけますか」「契約書の別表では週3回となっている清掃が、作業報告では週2回になっています。理由と今後の対応を書面でお願いします」「この工事の見積もりについて、内訳と、ほかに見積もりを取った会社の有無を教えてください」
管理会社とのトラブルの相談先
管理会社との話し合いで解決しないときは、外部の相談先を使えます。目的によって窓口が違うので、使い分けが大切です。
| 相談先 | 相談できること | 知っておきたい点 |
|---|---|---|
| マンション管理センター | 管理組合の運営・規約(03-3222-1517)、建物・設備(03-3222-1519) | 国の指定を受けた公益財団法人。平日9時30分〜17時。中立の立場から助言 |
| マンション管理業協会 | 会員の管理会社の業務に関する苦情の解決の申出 | 適正化法第95条の指定法人。会員会社が対象で、事前に管理会社との交渉が必要。費用はかからない |
| 国土交通省(地方整備局等) | 法律違反の疑いに関する情報提供 | 処分は国が判断する。過去5年の処分歴はネガティブ情報等検索サイトで確認できる |
| 自治体のマンション相談窓口 | 管理組合運営の一般的な相談、専門家派遣 | 窓口の有無や内容は自治体ごとに異なる |
| マンション管理士・弁護士 | 契約の解釈、管理会社への申入れ、損害の請求 | 個別の判断や代理が必要な場合に依頼する |
マンション管理業協会の苦情解決制度は、管理組合の正当な代表者が、理事会の決議などを経て申し出る仕組みです。協会は法的な拘束力のある判断をする機関ではなく、すでに訴訟になっている案件は扱えない点にも注意が必要です。マンション管理センターの電話相談は、1件15分前後で助言することを目安にしており、個別の法律相談や特定の弁護士・会社の紹介は行っていません。
相談の前にそろえておくもの
外部の窓口に相談するときは、管理委託契約書(別表・別紙を含む)、直近の重要事項説明書、毎月の収支書面と管理事務報告書、申入れの書面と管理会社からの回答、経緯を時系列にまとめたメモを手元に用意します。電話相談は時間が限られるため、「何が起きて、何を求めていて、管理会社は何と答えたか」を3行程度で説明できるようにしておくと、助言が具体的になります。理事会として相談する場合は、相談することを理事会で決め、相談結果を議事録に残しておきます。
令和5年度マンション総合調査では、管理に疑問を持ったときの相談先として、マンション管理センターを挙げた区分所有者は5.8%、マンション管理士も5.8%、マンション管理業協会は2.6%、地方公共団体は3.6%でした。外部の窓口はまだ十分に知られていないといえます。
改善しないときは契約の見直しへ
申入れや相談を重ねても改善しない場合は、契約を見直す段階です。マンション標準管理委託契約書では、更新しない場合の申出や解約の申入れは、管理組合・管理会社のどちらからも3か月前までに書面で行う形になっています。管理委託契約の締結は総会の決議事項(標準管理規約第48条)なので、変更する場合は新しい会社の選定、重要事項説明、総会決議、引継ぎまでを見込み、半年から1年の余裕を持って動きます。
- これまでの申入れと回答の記録が、時系列でまとまっているか
- 不満が契約上の問題か、仕様(業務範囲)の問題か整理できているか
- 他社から同じ仕様で見積もりを取り、比較できる状態か
- 住民に経緯を説明し、意見を聞く場を設けたか
- 引継ぎで受け取る書類・鍵・口座の一覧を作ったか
見直しは、必ずしも会社の変更だけではありません。業務の範囲を絞る、管理員の勤務形態を変える、担当者の体制を契約の条件に加えるなど、今の会社と条件を詰め直して継続する選択肢もあります。他社の見積もりは、変更のためだけでなく、こうした交渉の材料にもなります。
管理会社を替えても、管理組合の側の体制が変わらなければ、同じ不満が繰り返されることがあります。何を任せ、何を自分たちで決めるのかを整理しておくことが、次の会社とのよい関係の土台になります。役割分担は管理会社に任せること、管理組合で決めること、理事会の運営はマンション理事会とは?が参考になります。
管理会社の対応に不満があるときの確認リスト
| 確認する項目 | 見ておきたいこと |
|---|---|
| 事実の記録 | 依頼日・内容・対応を日付入りで残しているか |
| 契約書の別表 | 不満の対象が契約上の業務か、契約外の期待か |
| 毎月の収支報告 | 翌月末日までに届いているか |
| 管理事務報告 | 事業年度終了後に管理業務主任者から説明を受けたか |
| お金の管理 | 保管口座の名義と印鑑等の保管者 |
| 申入れの方法 | 理事会で決め、理事長名の書面で伝えたか |
| 相談先 | 管理センター、管理業協会、専門家のどこに何を聞くか |
| 契約の期限 | 更新時期と、解約・不更新の申入れ期限 |
記録と申入れの書面がそろっていれば、外部の窓口に相談するときも、管理会社を見直すときも、話が早く進みます。
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よくある質問
マンション管理会社への苦情はどこに言えばいいですか?
まずは理事会として方針を決め、管理会社の担当者、改善しなければ上長や本社窓口に書面で申し入れます。それでも解決しない場合、会員会社であればマンション管理業協会の苦情解決制度、運営全般の助言はマンション管理センター、法律違反の疑いは国土交通省(地方整備局等)が窓口になります。
管理会社の担当者を替えてもらうことはできますか?
担当者の人事は管理会社が決めることですが、具体的な事実を示して体制の見直しを求めることはできます。いつ、何を依頼し、どう対応されたかの記録をそろえ、理事会として上長に面談を申し入れると、担当替えや副担当の追加などが検討されやすくなります。
管理会社の対応が悪い場合、契約途中で解約できますか?
マンション標準管理委託契約書に沿った契約なら、管理組合・管理会社のどちらからも、少なくとも3か月前に書面で解約を申し入れることができる形になっています。実際の契約書の条項を確認し、新しい管理会社の選定と総会決議の日程もあわせて考えます。契約の解釈に争いがある場合は専門家に相談してください。
管理会社のランキングやワースト情報は参考になりますか?
参考程度にとどめるのが無難です。同じ会社でも支店や担当者によって対応は大きく変わります。会社の行政処分歴は国土交通省のネガティブ情報等検索サイトで確認できますが、判断の中心は自分たちのマンションでの対応の記録と、契約書・報告書の内容に置くことをおすすめします。
住民からの苦情に管理会社が対応してくれないのはなぜですか?
騒音やマナーなどの住民間トラブルは、管理委託契約上、管理会社が当事者として解決する業務に含まれていないことが多いためです。規約や使用細則の違反には、理事会の決議を経て理事長が勧告や指示を行うのが基本で、管理会社には文書の作成など事務的な支援を依頼します。
出典・参考資料
- 国土交通省|令和5年度マンション総合調査結果〔概要編〕 ↗
- e-Gov法令検索|マンションの管理の適正化の推進に関する法律 ↗
- 国土交通省|マンション標準管理委託契約書(令和7年12月12日改訂) ↗
- 公益財団法人マンション管理センター|相談窓口について ↗
- 一般社団法人マンション管理業協会|苦情の解決制度 ↗
- 国土交通省|ネガティブ情報等検索サイト(マンション管理業者) ↗
写真:Photo by Michael Effendy on Unsplash
本ページは一般的な確認の視点を整理した編集部記事です。個別の建物・契約・法的判断の確認を代替しません。法令・規約・契約は最新の資料で確認してください。