議案・議事録の基本

議案書は「何を決める会議か」、議事録は「何が決まった会議か」を伝える書類です。2026年4月からは全議案に「議案の要領」が必要になりました。賛否を判断できる議案書と、次の人が使える議事録の書き方を整理します。

まず押さえたいこと:議案書と議事録を「対」でつくる

この記事の要点

  1. 01議案書は1ページ目で「何を決めるか」が分かる形に
  2. 022026年4月以降、全議案で「議案の要領」の通知が必要
  3. 03議事録は経過の要領と結果、署名、保管・閲覧まで
  4. 04正式な記録と住民向けの周知は分けて考える
この記事の目次
白い用紙に万年筆で書き込んでいる手元

議案書は「読んだ人が賛否を決められるか」で書く

総会の議案書を受け取った組合員の多くは、会場に来ないまま、書面だけを読んで賛否を決めます。国土交通省「令和5年度マンション総合調査」でも、直近の通常総会に本人が出席した割合の平均は24.6%にとどまり、議決権行使書の提出割合の平均は35.6%、委任状は28.9%でした。議案書は、当日の説明を聞けない人のための「唯一の説明資料」だと考えて書く必要があります。

2026年4月1日に施行された改正区分所有法では、すべての議案について、招集通知に会議の目的と「議案の要領」を示すことが求められるようになりました(法務省民事局資料、令和8年4月)。標準管理規約のコメントは、「会議の目的」が議題の名称に当たるのに対し、「議案の要領」は組合員が議案への賛否を検討できる程度に決議する内容の案を要約したもの、と説明しています。これまで普通決議の議案では記載が必須ではなかったため、「第3号議案 共用部分の修繕の件」と題名だけを書いてきたマンションは、書き方を見直す必要があります。

議案書と議事録の対応関係。議案書の決めてほしいこと・背景・選択肢・費用財源上限・未確認の点が、議事録の決議結果・質問と回答・意見と修正点・担当と期限・持ち越し事項に対応する
議案書の項目と議事録の項目を対応させておくと、決定の経緯を後からたどりやすい
項目伝わりにくい書き方判断できる書き方
件名エントランスの件エントランス自動ドアの更新工事の実施
金額別紙見積書のとおり税込286万円を上限とし、修繕積立金から支出
理由老朽化のため設置から18年、昨年度に故障3回、部品供給の終了予定の通知あり
決めることご承認をお願いします工事の実施と支出上限を承認し、施工会社との契約を理事会に一任する

「議案の要領」はどこまで書くか

具体的な書式が決まっているわけではありません。実務上の目安は、「その議案が可決されたら何が決まるのか」を、通知を読んだ組合員が誤解なく理解できることです。規約変更なら改正後の条文案(新旧対照表)、工事なら工事の範囲・金額の上限・財源、役員選任なら候補者の氏名、というように、決議の中身そのものを示します。迷ったときは「この書き方で、欠席した人が賛否を決められるか」を基準にしてください。

表の右側の数字は説明のための想定例です。ポイントは、見積書を開かなくても、何に、いくら、なぜ、どこまでを任せるのかが分かることです。

議案書の1ページ目に置く5つの項目

議案書の本文は、次の順番で書くと読み手が迷いません。詳しい見積書や図面は参考資料として後ろに付け、本文には要点だけを書きます。

  1. 決めてほしいこと(1〜2行)「○○を実施すること、及びその費用として修繕積立金から○円を上限に支出することを承認いただきたい」のように、決議の文言そのものを書く。
  2. 背景と、なぜ今か点検結果や不具合の履歴、長期修繕計画での位置づけ。先送りした場合の影響も。
  3. 比べた選択肢見積もりを取った会社数、仕様の違い、「実施しない」場合の案。
  4. 費用と財源税込の総額または上限額、支出する会計(管理費会計か修繕積立金会計か)、修繕積立金の残高への影響。
  5. 未確認の点と今後の予定現時点で分からないこと、工事の時期、住民への影響、理事会に一任する範囲。

標準管理規約では、修繕積立金の取崩しや特別の管理の実施は総会の決議事項です(48条10号)。工事の実施と費用の支出を一つの議案で決めるのか、分けるのかも、議案書を作る段階で整理します。

参考資料は「本文で触れたもの」だけを付ける

見積書、図面、調査報告書をすべて添付すると、議案書が数十ページになり、かえって読まれなくなります。本文で根拠として触れた資料だけを付け、それ以外は「管理事務室で閲覧できます」と案内する方法もあります。複数社の見積もりを比べた場合は、全社の見積書を付けるより、金額と主な違いを1枚の比較表にまとめたほうが伝わります。比較表の作り方は見積もりを比較するポイントが参考になります。

総会議事録に必要なこと:記載・署名・保管・閲覧

総会の議事録は、区分所有法と管理規約で作成の方法が定められた正式な記録です。国土交通省の標準管理規約(令和7年改正)では、次のように定めています(49条)。

項目標準管理規約の定め
作成者議長(書面または電磁的記録で作成)
記載事項議事の経過の要領とその結果
署名議長と、議長の指名する総会に出席した組合員2名。電磁的記録の場合は電子署名
保管理事長が保管し、所定の掲示場所に保管場所を掲示
閲覧組合員または利害関係人の書面(電磁的方法を含む)による請求で閲覧させる。日時・場所の指定可
議案書・資料理事長が保管し、理由を付した請求があれば閲覧させる(49条の2)

「議事の経過の要領」とは、発言をすべて書き起こすことではなく、誰がどの議案をどう説明し、どんな質疑があり、どう採決したかの要点です。とくに次の点は漏れやすいので、ひな形に欄を作っておきます。

  • 開催日時・場所(WEB併用の場合はその方法)
  • 組合員総数と議決権総数、出席数(本人・議決権行使書・委任状の内訳)
  • 定足数を満たしていることの確認
  • 議案ごとの賛成・反対・棄権の数と、可決・否決の結果
  • 主な質問と回答、後日回答とした事項

総会議事録の流れ(ひな形の例)

  1. 冒頭会議名、日時、場所、組合員総数・議決権総数、出席の内訳、定足数の確認、議長と署名人の指名。
  2. 議案ごと議案名と決議の種類、説明者と説明の要点、質疑の要点、採決の結果(賛成・反対・棄権の数)。
  3. 報告事項事業報告や監査報告など、採決をしない報告の要旨。
  4. 閉会閉会時刻、後日回答とした事項の一覧、署名欄。

2026年4月以降は出席者を母数とする決議が原則になったため、「出席者が何人で、そのうち何人が賛成したか」を正確に残しておくことの重みが増しています。

理事会議事録は「次の理事会で使える」形に

理事会の議事録も、標準管理規約では総会議事録の規定を準用し、議長と理事会に出席した理事2名が署名する形です(53条4項)。理事会で使った資料の保管と閲覧にも、総会資料と同じ規定が準用されます(53条5項)。

理事会議事録は、正式な記録であると同時に、次の理事会の「宿題リスト」でもあります。議題ごとに次の形でまとめると、翌月の理事会の冒頭で確認がしやすくなります。

欄書く内容の例
議題と区分第2号 給水ポンプ交換工事(決議)
説明の要点管理会社より2社の見積もり(A社162万円、B社171万円、税込)の説明
主な意見保守契約の範囲との関係について質問あり。管理会社が次回までに回答
結論A社に発注。出席理事7名中7名賛成
担当・期限理事長と管理会社、7月末までに発注。完了後に報告

議題の区分(報告・協議・決議)を議事録にも書いておくと、「協議しただけで決めていない」ことが明確になります。協議の議題で意見がまとまりかけても、決議として扱わなかったなら、そのことが分かるように書くのが後の誤解を防ぐコツです。

クリップボードの用紙にペンで書き込む手元
記録係は発言を書き写すより、議題ごとの結論・担当・期限を確実に押さえる

録音・メモ・議事録の役割を分ける

議事録の作成を楽にするために、会議を録音する管理組合もあります。録音は議事録を作るための補助資料であり、議事録の代わりにはなりません。録音する場合は、次の点を事前に理事会で決めておきます。

  • 録音することを出席者に事前に知らせ、了承を得る
  • 誰が保管し、議事録の確定後どのくらいの期間で消去するか
  • 録音データを組合員の閲覧対象とするかどうか

議事録案の確認も、手順を決めておくと滞りません。記録係(または管理会社)が案を作成し、1〜2週間以内に出席者へ回覧、修正を反映したうえで署名人が署名する――という流れが一例です。回覧に時間がかかりすぎると、記憶があいまいになり、修正のやり取りが長引きます。

記録係が押さえる3つのこと

記録係を任されると、発言をすべて書き取ろうとして手が追いつかなくなりがちです。押さえるべきは、議題ごとの「結論」「その理由」「担当と期限」の3つです。議論の途中経過は、論点が分かる程度の要約で十分です。結論がはっきりしないまま次の議題に移りそうなときは、「記録のために確認します。この件は決定でよろしいですか」と議長に確認して構いません。記録係のこの一言が、会議の質を上げることもあります。

注意議事録を後から書き換えることは、記録の信頼性を損ないます。確定後に誤りが見つかった場合は、元の議事録を修正するのではなく、次の会議で訂正を確認し、その旨を記録するのが基本です。

正式な記録と、住民への周知を分ける

議事録には、滞納者の住戸番号や、住民間のトラブルの経緯など、個人に関わる情報が含まれることがあります。正式な議事録は閲覧請求に応じる必要がある一方で、掲示板に貼ったり全戸に配ったりする「お知らせ」には、そこまでの情報は必要ありません。

種類対象個人情報の扱い
正式な議事録保管・閲覧請求への対応必要な範囲で記載。閲覧時の取り扱いに注意
理事会だより・掲示全住民への周知住戸番号・氏名は載せず、決定事項と理由を中心に
個別の案件記録理事会と管理会社の内部滞納・トラブル対応は別ファイルで管理

住民向けの「理事会だより」は、A4用紙1枚程度に、決まったこと、検討中のこと、住民にお願いしたいことを分けて書くと読まれやすくなります。たとえば「給水ポンプを交換します(7月中、断水はありません)」のように、生活への影響を先に書くのがコツです。

名簿の扱いは管理組合によって方針が分かれます。令和5年度マンション総合調査では、組合員名簿の閲覧を認めていない管理組合が38.2%、閲覧理由が妥当な場合は閲覧できるとする管理組合が37.1%でした。閲覧の請求があったら、受付日、請求者、対象の書類、閲覧日時を記録し、閲覧は管理事務室など決まった場所で行う、というのが運用の一例です。議事録や名簿の閲覧請求にどう応じるかを、細則などであらかじめ決めておくと、請求があったときに担当者が一人で判断せずに済みます。総会の準備全体は総会の進め方と準備、決定の記録の考え方はマンション理事会とは?役割・仕事と決めることもあわせてご覧ください。

議案書・議事録の確認リスト

議案の要領全議案で、決める内容の要点が通知に書かれているか
決議の文言可決された場合に何が決まるのかが1〜2行で分かるか
費用税込の総額・上限、財源、修繕積立金への影響
一任の範囲理事会に任せる事項と条件(上限額など)
出席数本人・議決権行使書・委任状の内訳と定足数
採決議案ごとの賛成・反対・棄権の数と結果
署名議長と署名人2名(電磁的記録なら電子署名)
保管・閲覧保管者・保管場所の掲示・閲覧請求の手順
周知掲示用の要約から個人情報を除いているか

議案書と議事録を同じファイルに並べて保管しておくと、「何を提案し、何が決まったか」を一度に確認できます。電子データで保管する場合も、ファイル名に開催日と会議名を入れておくと検索しやすくなります。

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よくある質問

会議を録音すれば議事録は不要ですか?

不要にはなりません。標準管理規約では、議事録に議事の経過の要領とその結果を記載し、議長と署名人が署名する形が定められています。録音は議事録を正確に作るための補助資料です。録音する場合は出席者の了承を得て、保管者や消去の時期、閲覧の扱いを事前に決めておくことをおすすめします。

議事録の作成を管理会社に任せてもいいですか?

案の作成を管理会社に依頼すること自体は、多くのマンションで行われています。ただし標準管理規約では、総会議事録の作成者は議長です。管理会社の案をそのまま確定せず、議長と署名人が内容を確認し、決定の文言や数字が正しいかを確かめてから署名してください。委託の範囲は管理委託契約で確認できます。

議事録はいつまで保管すればいいですか?

標準管理規約は理事長が保管することを定めていますが、保管期間の年数は示していません。総会議事録は規約改正や過去の決議の根拠になるため、長期にわたり保管している管理組合が多いと考えられます。自分のマンションの規約や細則に定めがあるか確認し、なければ理事会で方針を決めて細則などに明記しておくと安心です。

組合員から議事録を見せてほしいと言われました。応じる必要はありますか?

標準管理規約では、組合員または利害関係人から書面等で請求があったときは、理事長が議事録を閲覧させなければならないとされ、閲覧の日時や場所を指定することはできます。議案書や付随資料については、理由を付した請求があれば閲覧させる定めです。個人情報を含む部分の扱いに迷う場合は、専門家に相談してください。

議事録の署名人を引き受けてくれる人がいません。

標準管理規約では、議長が総会に出席した組合員の中から署名人2名を指名します。当日になって探すと断られやすいため、事前に理事以外の組合員にも打診しておくと安心です。署名は議事録の内容が事実と合っていることを確認する役割であり、議案への賛否とは関係がないことを伝えると、引き受けてもらいやすくなります。

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出典・参考資料

写真:Photo by Luke Southern on Unsplash、Photo by Zulfugar Karimov on Unsplash

本ページは一般的な確認の視点を整理した編集部記事です。個別の建物・契約・法的判断の確認を代替しません。法令・規約・契約は最新の資料で確認してください。