設計監理方式と責任施工方式の違いを比較
大規模修繕の進め方には、第三者が設計と工事のチェックを担う設計監理方式と、施工会社が一括で担う責任施工方式があります。国土交通省の資料をもとに、仕組みと注意点を中立に整理します。
この記事の要点
- 01国交省マニュアルは関わり方を2方式に大別
- 02設計監理は専門家費用が別途かかり設計と施工が分離
- 03責任施工は一括だが費用内訳が不明瞭になりやすい
- 04どちらも中立性と費用内訳の確認が共通の論点
この記事の目次

大規模修繕工事の進め方は大きく2つに分かれる
大規模修繕工事の進め方は、専門家の関わり方で大きく2つに分けて考えられます。国土交通省「改修によるマンションの再生手法に関するマニュアル」(令和3年9月改訂)は、建築技術面で支援する専門家の関わり方に「設計・監理方式」と「責任施工方式」があると整理しています。どちらが優れているかを決めるものではなく、自分のマンションの理事会の体制や、かけられる手間に合わせて選ぶための材料です。
国土交通省「令和5年度マンション総合調査」では、外部専門家を選任している理由として「大規模修繕等の実施」が47.4%で最も多くなっています。修繕の場面で専門家の力を借りる管理組合は、決して珍しくないことがうかがえます。
この記事では、2つの方式を次のような言葉で整理します。工事全体の流れは大規模修繕工事の全体像で確認できます。
- 設計・監理方式
- 設計事務所など第三者に、調査診断や設計、施工会社選びの支援、工事中の工事監理を任せる方式。設計と施工は別の会社になります。
- 責任施工方式
- 建築士のいる施工会社に、調査診断・設計から工事までをまとめて任せる方式。窓口は施工会社1社です。
- 工事監理
- 工事が図面や仕様どおりに行われているかを、施工側とは別の立場で確認する仕事です。
設計監理方式の仕組み:設計と施工を分けて第三者が見る
設計・監理方式は、建築士のいる設計事務所などに、合意形成までの調査診断、改修設計、施工会社の選定支援を委託し、工事の段階では工事監理も委託する方式です。マニュアルは、工事費とは別に専門家の費用が発生するものの、調査診断・改修設計と施工が分離している点を特徴として挙げています。
おおまかな流れ
- 専門家を選ぶ設計事務所など、設計コンサルタントとして関わる会社を理事会で選び、委託契約を結びます。
- 調査診断と設計劣化の状態を調べ、工事の範囲や仕様をまとめた設計図書をつくります。
- 施工会社の選定同じ設計図書をもとに複数社から見積もりを集め、比較して決めます。
- 工事監理工事が始まってからは、施工とは別の立場で、仕様どおりに進んでいるかを確認します。
国交省の平成29年の通知は、この方式について、設計コンサルタントが技術資料を作成して管理組合の判断を支えることから、透明な形で施工会社を選ぶうえで有効とされていると説明しています。
国交省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」(工事完了の818件を集計)では、設計コンサルタント業務の業務量の内訳で、工事回数によらず「工事監理」の割合が最も高いという結果でした。工事中のチェックが、この方式で大きな比重を占めていることが分かります。
一方で、通知は管理組合の利益と相反する立場に立つ設計コンサルタントの存在も指摘しています。方式を採ること自体が安心材料になるわけではなく、誰に頼むかの確認が欠かせません。この点は後のセクションで詳しく扱います。
責任施工方式の仕組み:窓口が一本で進む代わりの注意点
責任施工方式は、建築士を有する施工会社に、調査診断・改修設計・資金計画から工事の実施までのすべてを請け負わせる方式です。マニュアルは、設計事務所などの専門家費用が別にかからない点を、メリットとして挙げています。窓口が1社にまとまるため、理事会が調整する相手が少なく、進行の見通しを立てやすい面もあります。
なお、両方式の費用の高低を比べた統計は、今回確認できていません。そのため「どちらが安い」とは言えず、費用の出方が違うという整理にとどまります。
責任施工を検討するときの確認項目
この方式を選ぶ場合は、任せきりにせず、理事会が内容を見られる状態をつくっておくことが現実的です。
- 調査診断・設計・工事それぞれの費用が、項目別に分けて示されているか
- 工事範囲や仕様が、劣化状況の調査結果と結びついて説明されているか
- 複数社から提案を受け、内容と費用を並べて比べられるか
- 工事中の確認や報告を、誰がどの頻度で行うかが決まっているか
見積書の読み方は修繕工事の見積書の見方、「一式」表記への対処は「一式」表記など、見積書で確認したい項目も参考になります。
費用・透明性・体制を並べて比べる
設計監理方式と責任施工方式は、費用の出方や工事中のチェックの仕組みが異なります。ここでは国土交通省「改修によるマンションの再生手法に関するマニュアル」(令和3年9月改訂)の記述をもとに、観点ごとに並べます。どちらが優れているかを示す表ではありません。
| 観点 | 設計監理方式 | 責任施工方式 |
|---|---|---|
| 費用の出方 | 工事費とは別に専門家の費用が発生する | 専門家の費用が別にかからない点がメリットとされる |
| 設計と施工 | 分離している | 一体化している |
| 工事中のチェック役 | 工事監理を設計事務所などに委託する | 設計から工事まで同じ施工会社が請け負う |
| 組合の負担 | 専門家と施工会社の両方とやり取りする | 窓口は施工会社が中心になる |
| 注意点 | 専門家が中立に動いているかの確認 | 工事内容と費用内訳の関係が不明瞭になりやすい |
費用の高低を比べる統計は、今回の確認範囲では見つかっていません。そのため「どちらが安い」とは言えず、上の表も費用の「出方」の違いにとどめています。
なお、このマニュアルは令和8年3月改訂の「マンション改修マニュアル」に統合・再編されています。後継マニュアルで同じ記述が残っているかは確認できていないため、詳しく知りたい場合は最新版も見てください。全体の流れは大規模修繕工事の全体像にまとめています。
どちらを選んでも外せない中立性の確認
どちらの方式でも共通して問われるのが、関わる会社や専門家が管理組合の側に立っているか、という点です。国土交通省の通知(令和5年4月3日)は、設計監理方式による大規模修繕が近年多く実施されているとしたうえで、採用する場合は設計コンサルタントが利益相反行為を起こさない中立的な立場を保ち、施工会社の選定が公正に行われるよう留意が必要としています。
平成29年1月27日の通知も、設計コンサルタントが技術資料を作って組合の意思決定を支える設計監理方式は、透明な形で施工会社を選ぶうえで有効とされていると説明しています。一方で、組合の利益と相反する立場に立つ設計コンサルタントの存在も指摘されています。この通知は、マンション管理の適正化に関する指針の「工事の発注等については、利益相反等に注意して、適正に行われる必要がある」という記載も引用しています。
理事会で使える質問例と相談先
方式を決める前の打ち合わせで、理事会がそのまま使える聞き方を整理します。相手の答え方や、書面で出してもらえるかどうかも判断材料になります。
設計コンサルタントに聞くこと
- 「施工会社から報酬や紹介料を受け取る関係はありませんか。書面で確認できますか」
- 「工事監理の業務量(人・時間)はどの程度を見込んでいますか」
- 「施工会社の選定は、どの基準で、誰が比較する予定ですか」
責任施工の施工会社に聞くこと
- 「設計にあたる費用と工事の費用を、項目別に分けて出せますか」
- 「工事内容を変えた場合、費用の内訳はどう変わりますか」
- 「工事中の検査や記録は、どの担当者がどのように行いますか」
方式が違っても、見るべき点は「費用の内訳が見えるか」「判断の根拠が書面で残るか」です。相見積もりの進め方は相見積もりの取り方、見積書の項目は「一式」表記など、見積書で確認したい項目が参考になります。
迷ったときの相談先
国土交通省は、大規模修繕工事の発注に関する相談窓口として、住宅リフォーム・紛争処理支援センターの「住まいるダイヤル」を案内しています。マンション管理士や建築士などが助言する窓口で、見積費用については無料の「見積チェックサービス」もあります(令和8年9月28日付の国交省案内)。
サイトの無料チェックを使う場合も含め、最終的な判断は組合で行います。個別の契約や法的な判断が絡むときは、マンション管理士・弁護士・一級建築士などの専門家に相談してください。
方式を決める前に理事会で確認したい7項目
| 確認する項目 | 見ておきたいこと |
|---|---|
| 専門家の関わり方の整理 | 設計・監理方式か責任施工方式か、2方式の違いを共有したか |
| 専門家費用の出方 | 工事費とは別に設計事務所などの費用が出るかを確認したか |
| 費用内訳の分け方 | 設計に当たる費用と工事費を項目別に出せるか |
| 設計コンサルタントの中立性 | 施工会社から報酬や紹介料を受けない関係を書面で確認したか |
| 工事監理の業務量 | 人・時間の見込みが極端に少なくないか確認したか |
| 施工会社の選定基準 | 誰が、どの基準で比較するのかを事前に示してもらったか |
| 工事中の検査と記録 | 担当者と記録の残し方を決めているか |
| 第三者への相談 | 住まいるダイヤルなど公的な窓口を把握しているか |
どちらの方式でも、費用の内訳と関わる会社の中立性を書面で確認しておくと、理事会で比較しやすくなります。不安があれば、マンション管理士や一級建築士などの専門家にも相談してください。
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よくある質問
設計監理方式と責任施工方式では、どちらが安いのですか。
両方式の費用の高低を比べた統計は、今回確認できていません。設計監理方式は工事費とは別に専門家の費用がかかり、責任施工方式はその費用が別にかからない点が特徴とされます。総額は個別の条件で変わるため、同じ条件で内訳を比べることが手がかりになります。
責任施工方式では専門家の費用がかからないなら、得なのでしょうか。
国土交通省のマニュアル(令和3年9月改訂)は、専門家の費用が別にかからない点をメリットに挙げています。一方で、設計と施工が一体になるため工事内容と費用内訳の関係が不明瞭になりやすいとも記しています。総額が低いとは限らないため、内訳の確認が必要です。
設計コンサルタントに依頼すれば、中立性は心配いりませんか。
国土交通省の通知(令和5年4月3日)は、設計監理方式を採る場合、設計コンサルタントが利益相反行為を起こさない中立的な立場を保つよう留意が必要としています。依頼前に、施工会社から報酬などを受ける関係がないか書面で確認しておくと安心です。
方式を決める際、どこに相談できますか。
国土交通省は、住宅リフォーム・紛争処理支援センターの「住まいるダイヤル」を相談窓口として案内しています。マンション管理士や建築士などが助言し、見積費用については無料の「見積チェックサービス」もあります。詳しい条件は同センターでご確認ください。
外部の専門家を入れている管理組合は多いのでしょうか。
国土交通省「令和5年度マンション総合調査」では、外部専門家を選任している理由として「大規模修繕等の実施」が47.4%で最も多くなっています。この数字は選任理由の内訳であり、どの方式が多いかを示すものではありません。
出典・参考資料
- 国土交通省|改修によるマンションの再生手法に関するマニュアル(令和3年9月改訂) ↗
- 国土交通省|マンション大規模修繕工事等の発注等の適正化について(令和5年4月3日) ↗
- 国土交通省|設計コンサルタントを活用したマンション大規模修繕工事の発注等の相談窓口の周知について(平成29年1月27日) ↗
- 国土交通省|令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査 ↗
- 国土交通省|令和5年度マンション総合調査結果からみたマンションの居住と管理の現状 ↗
- 国土交通省|マンション大規模修繕工事の発注等に関する相談窓口の周知等について(令和8年9月28日付) ↗
写真:Photo by Se. Tsuchiya on Unsplash
本ページは一般的な確認の視点を整理した編集部記事です。個別の建物・契約・法的判断の確認を代替しません。法令・規約・契約は最新の資料で確認してください。