「一式」表記など、見積書で確認したい項目

「一式」は、それだけで不適切な表記ではありません。大切なのは中に何が含まれるかを聞くことと、実数精算や別途工事のように、総額が後から動く項目を見分けることです。確認の手順と質問の書き方を整理します。

まず押さえたいこと:一式は中身を聞く。精算と別途は分けて見る

この記事の要点

  1. 01一式は表記だけで良し悪しを決めず、中身と算定根拠を聞く
  2. 02金額の大きい一式、他社と対応しない一式から確認する
  3. 03見積項目を確定・実数精算・別途の3つに分けて読む
  4. 04精算単価と承認手順は、契約前に書面で決めておく
この記事の目次
手書きのメモの上に置かれた電卓

「一式」は、それだけで悪い表記ではない

見積書に「一式」と書かれた行があると、中身が隠されているように感じるかもしれません。しかし、数量で表しにくい費用や、細かく分けるとかえって読みにくくなる費用は、一式でまとめるのが一般的です。表記だけで見積もりの良し悪しは決まりません。

問題になるのは、一式の中身を聞いても説明が返ってこない場合や、一式の金額が大きく、他社の見積もりと対応づけられない場合です。一式を見つけたら、「何が含まれるか」「どう計算したか」を聞けばよい、と考えると気が楽になります。

重なった書類の束のクローズアップ
「一式」の中身は、別紙の内訳や算出根拠で確かめます。

一式で書かれることが多い項目

項目の例中身の例聞いておきたいこと
共通仮設現場事務所、仮設トイレ、資材置き場、仮設電気・水道設置場所と期間、光熱水費をどちらが負担するか
養生・清掃床や植栽の保護、完了時の清掃養生する範囲、住戸内に入る作業の有無
安全対策誘導員、防犯対策、落下防止誘導員の配置日数、防犯カメラ・センサーの有無
各種申請・書類道路使用許可などの手続き、完了図書申請の対象、提出される書類の一覧
現場管理費現場代理人の人件費、事務費など常駐体制、計上の考え方(率か積み上げか)

現場管理費や一般管理費は、工事費に一定の率を掛けて計上する会社もあれば、人件費や事務費を積み上げて計上する会社もあります。率で計上している場合は、何に対する何%なのかを聞けば足ります。積み上げの場合は、主な内訳を出してもらうと、共通仮設との重複がないかも確かめられます。

費用の内訳(建築系工事・仮設・諸経費)の全国的な割合は、大規模修繕工事の費用相場と内訳の解説で図にしています。

一式が「確認すべき一式」になる3つのサイン

すべての一式を細かく分解してもらう必要はありません。手間をかけるべきなのは、次のようなサインがある一式です。

金額が大きい

工事費全体から見て無視できない金額の一式は、内訳を出してもらう対象です。どこからを「大きい」とするかに決まった基準はないため、たとえば「100万円以上の一式は内訳を求める」のように、管理組合として線を引いておくと、各社に同じ依頼ができます。

他社の見積もりと対応しない

A社が数量×単価で細かく書いている作業を、B社が一式でまとめている場合、そのままでは比較表の同じ行に入れられません。B社に同じ単位での内訳を求めるか、A社の該当行をまとめて金額で比べます。比較表の作り方は見積もり比較の記事で紹介しています。

他の項目と重なっていそう

共通仮設の一式に「仮設電気」が含まれているのに、直接仮設にも「電気設備」の行がある、といった場合です。一式は中身が見えにくいため、重複に気づきにくくなります。内訳を出してもらい、他の行と突き合わせます。

重複は意図的なものとは限らず、担当者が科目ごとに分かれて積算した結果として起きることもあります。見つけたら、どちらの行に寄せるのかを確認し、訂正版をもらえば十分です。

ポイント

一式について聞くときは、「内訳を出してください」だけでなく、「人数×日数」「数量×単価」など、どの形で説明してほしいかを指定すると、比べやすい回答が返ってきます。

金額の「確かさ」で、見積項目を3つに分ける

一式かどうかと並んで大切なのが、その金額が契約時に確定するのか、工事中に変わりうるのか、そもそも見積もりに入っていないのか、という区別です。見積書の総額は、この3種類が混ざった数字です。

見積書の中では、これらが同じ表の中に区別なく並んでいることが少なくありません。備考欄に小さく「実数精算」「別途」と書かれているだけの場合もあるため、1行ずつ備考を確認し、どの区分に当たるかを自分たちで印を付けていく作業が必要になります。

見積項目を、契約金額に含まれる確定項目、単価は確定し数量は後で決まる実数精算項目、今回の金額に入らない別途・対象外項目の3つに分けた図
金額の確かさによる3区分と、それぞれの確認点。

確定項目は、数量×単価で計算されたものや、範囲と内訳が説明された一式です。実数精算項目は、ひび割れやタイルの浮きのように足場を掛けてから数量が決まるもので、見込み数量で見積もり、実際の数量で精算します。別途・対象外は、今回の見積金額に入っていない工事です。

比較表や総会資料では、この3つを色分けしたり、列を分けたりして示すと、「総額のうち、どれだけが動く可能性のある金額か」が一目でわかります。

実数精算は、単価と確認の手順を決めておく

実数精算の項目は、工事が始まってから数量が確定します。見込み数量との差は、そのまま増額または減額になります。精算そのものは合理的なやり方ですが、単価、測り方、承認の手順が決まっていないと、増額の理由を後から確かめられません。

  1. 精算の対象と単価を契約に書くどの項目を実数精算にするか、精算に使う単価を契約書や見積条件に明記します。
  2. 数量の測り方と確認者を決める施工会社の調査結果を、設計・監理者が確認する流れにします。図面へのマーキングと写真で報告してもらいます。
  3. 承認の手順と上限を決める増額が一定額を超えたら理事会の承認を要する、などのルールを事前に決めます。
  4. 減った場合も同じ手順で精算する見込みより数量が少なければ減額になります。増額だけでなく減額も報告と精算の対象であることを、契約時に確認しておきます。
  5. 予算に余裕を持たせる総会で工事費を決議するとき、精算による増減や予期しない工事に備えた金額をどう扱うかも議案に書いておきます。

見込み数量の置き方は会社によって違います。少なめに置けば総額は低く見え、多めに置けば精算で減額が出やすくなります。比較のときは、各社の見込み数量と精算単価を並べ、見込み数量を同じにそろえた場合の金額も出してもらうと、公平に比べられます。

「別途」「参考」「概算」は、総額の外にある

見積書の備考欄や最後のページには、「別途」「参考」「概算」「対象外」といった言葉が並んでいることがあります。これらは今回の見積金額に含まれていない、または金額が確定していないという意味で、読み飛ばすと予算が合わなくなります。

表記意味の例確認したいこと
別途今回の見積には含めず、必要なら別に発注する工事として必要か、発注する場合の金額と時期
参考金額の目安として示すが、契約金額ではない正式な見積もりにする条件
概算調査前などの理由で、金額が変わりうる確定する時期と、変動の幅
対象外この会社は施工しないほかに誰が行うのか、管理組合の負担か

工事用の電気・水道の費用をどちらが負担するか、植栽の移植や駐車場の車両移動にかかる費用をどう扱うかなど、細かな費用の負担区分も、この欄に書かれていることがあります。別途の工事を最終的に発注すれば、その分の支出は増えます。比較のときは、別途工事を含めた「実際に必要になる金額」で並べ直すのが確実です。

「参考」や「概算」とされた金額は、あくまで目安です。総会資料にそのまま載せると確定した金額のように受け取られやすいため、「参考金額(確定は○月予定)」のように、性質がわかる書き方にしておきます。

注意別途工事が多い見積もりは、総額が低く見えます。「別途の工事を本工事に含めた場合の金額」を出してもらい、他社と同じ範囲で比べてください。

疑問は「怪しい」ではなく、質問に変えて残す

一式や別途の多い見積もりを見て、「怪しい」「ごまかしでは」と感じても、理事会の記録にそう書くのは避けます。表記だけで不正と決めつけることはできず、相手との関係もこじれます。疑問は、答えられる形の質問に変えて残します。

感じた疑問質問の書き方
一式が高い気がする「○番の一式に含まれる作業・人数・日数・材料を示してください」
別途が多い「別途とした工事を含めた場合の金額と、別途とした理由を教えてください」
あとで増えそう「実数精算の項目と精算単価、増額時の報告方法を示してください」
他社と書き方が違う「○番を、A社と同じ単位(㎡・m・か所)で示してください」

回答が具体的で、根拠資料が添えられているかどうかは、それ自体が見積もりを評価する材料になります。回答がなかった質問も「未回答」として記録しておきます。

理事会の記録には、こう書く

議事録には、評価ではなく事実と次の行動を書きます。たとえば「共通仮設一式(420万円)について内訳の提出を依頼。回答期限は○月○日」「別途工事3件について、含めた場合の金額を全社に依頼」といった書き方です。理事が交代しても、何を確かめ、何が残っているかを引き継げます。

契約前に、一式と精算の取り決めを固める

見積もりの段階で確認したことは、契約書や契約に付ける見積条件書に反映されて初めて効力を持ちます。一式の内訳、精算の単価と手順、別途工事の扱いを、契約書類のどこに書くかを確かめてください。契約前の確認事項は契約前に確認したいことの記事で詳しく扱っています。

  • 一式の内訳書が契約書類に添付されているか
  • 実数精算の項目・単価・確認方法・承認手順が書かれているか
  • 別途工事の一覧と、発注する場合の扱いが決まっているか
  • 総会で決議した金額の範囲内で、増額にどう対応するか決めているか

契約書の約款(標準的な条項をまとめた部分)に、工事内容の変更や請負代金の変更の手続きが書かれていることもあります。個別の取り決めと約款の内容が食い違っていないかも見ておきます。条文の解釈で迷う場合は、弁護士やマンション管理士などの専門家に確認してください。

見積書の一式や別途が多く、どこまで確認すればよいか判断がつかないときは、第三者に見てもらう方法もあります。当サイトの修繕工事の見積もり無料チェックでも、一式の中身や確認すべき点を整理しています。

一式・精算・別途のチェックリスト

大きな一式内訳(作業・人数・日数・材料)を出してもらったか
一式の重複他の項目と同じ費用が入っていないか
他社との対応同じ単位での内訳を求めたか
実数精算の項目どの項目が精算対象か一覧にしたか
精算単価単価と測り方、確認者が決まっているか
承認の手順増額時に理事会の承認が必要な金額を決めたか
別途・対象外含めた場合の金額と、誰が行うかを確認したか
参考・概算確定する時期と変動の幅を聞いたか
契約書類一式の内訳と精算の取り決めが反映されているか

チェックの結果は、比較表の備考欄や質問表に書き込んでおくと、契約書類の確認のときにもそのまま使えます。

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よくある質問

一式がある見積もりは断るべきですか?

表記だけでは判断できません。数量で表しにくい費用は一式で書かれるのが一般的です。中身の説明を求め、内訳や算定根拠が示されるか、他社の見積もりと対応づけられるかを確認してください。説明が具体的であれば、一式があること自体は問題になりません。

一式の内訳を求めたら、嫌がられませんか?

管理組合が発注者として内訳を確認するのは自然なことです。とくに金額の大きい一式や、比較に必要な一式については、全社に同じ形で依頼すれば公平です。「比較のために、○番を人数×日数の形で示してください」のように、目的と形を伝えると回答をもらいやすくなります。

実数精算で増額になった場合、総会をやり直す必要がありますか?

管理規約や総会決議の内容によります。総会で工事費を決議するときに、精算による増減や予備的な費用をどう扱うか、理事会に任せる範囲を議案に書いておくのが一般的な備えです。判断に迷う場合は、規約を確認したうえでマンション管理士などの専門家に相談してください。

「予備費」が見積書に入っているのは普通ですか?

見積書に予備費を入れるかどうかは、会社や発注の方式によって扱いが分かれます。大切なのは、予備費が何に使われる想定で、使わなかった場合にどう精算されるかです。管理組合として予備の予算を持つ場合は、見積書ではなく総会の議案で、使い道と承認の手順を決めておく方法もあります。

「別途」とされた工事は、やらなくてもよいのですか?

必ずしもそうではありません。別途は「今回の見積金額に含まない」という意味で、工事の必要性とは別の話です。必要な工事が別途とされていれば、いずれ費用がかかります。別途とした理由と、含めた場合の金額を確認し、実施するかどうかを管理組合で判断してください。

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出典・参考資料

写真:Photo by Joachim Schnürle on Unsplash、Photo by Camilo Rueda Lopez on Unsplash

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